中国、エヌビディアの独占禁止法違反疑惑を調査

中国政府は12月9日、米国の半導体大手であるエヌビディア(NVDA)に対して独占禁止法違反の調査を開始したと発表しました。この措置は、ワシントンが技術規制を強化する中で、中国が米国のAIおよび半導体分野の大手企業を標的にする動きとして注目されています。

調査の背景:メラノックス・テクノロジーズの買収

中国の国家市場監督管理総局は、エヌビディアが2019年に買収したイスラエルのメラノックス・テクノロジーズに関する行動を重点的に調査しています。この買収は70億ドル規模で、中国政府は当時、エヌビディアが中国企業を差別しないことを条件に承認しました。また、エヌビディアは新製品を提供してから90日以内に、その情報を競合企業にも共有する義務を負うことになっていました。

米中技術対立とエヌビディアへの影響

今回の調査は、中国政府が米国の技術規制強化に対抗する一環として実施されたものです。エヌビディアはAIチップの分野で圧倒的な地位を築いており、大規模な言語モデルやAIシステムのトレーニングに不可欠な技術を提供しています。同社の市場価値は急騰しており、人工知能向けのチップ需要の増加により、最も価値のある上場企業の一つとなっています。

しかし、中国の動きによりエヌビディアの株価には影響が出ています。9日の米国市場での取引開始直後、株価は3%近く下落しました。6日の終値は1.8%下落して142.44ドルで取引を終えています。

ワシントンの技術規制と中国の対抗措置

米国政府は、中国企業への先端半導体の販売を制限する方針を強化しています。例えば、エヌビディアが中国企業に最も先進的なチップを販売することを禁止しているほか、オランダ政府にも圧力をかけ、ASMLホールディング(ASML)が中国への最高性能の機器販売を制限するよう求めています。

一方で、中国政府はこれに反発し、マイクロン・テクノロジー(MU)などの米国企業を標的にした制裁を行っています。マイクロンは中国の「重要なインフラ」から排除されるなどの措置を受けており、これが同社の売上にも大きく影響しています。

グローバル規模での独占禁止法調査

エヌビディアのAIチップ市場での支配力は、他国でも注目されています。今年初めには米司法省が独占禁止法に違反している可能性について調査を開始しました。エヌビディアが競合サプライヤーへの切り替えを難しくし、AIチップを独占的に使用しない顧客を不利に扱っているとの懸念が浮上しています。

また、フランスの独占禁止法当局や欧州連合(EU)も同様の調査を開始しており、エヌビディアのグローバルな市場支配が規制の対象となっています。

エヌビディアとAIチップ市場の今後

エヌビディアは、AIチップ市場における技術リーダーとしての地位を確立していますが、その独占的地位は世界中で厳しい視線にさらされています。同社のグラフィックプロセッサユニット(GPU)は、もともとビデオゲーム向けに開発されましたが、現在ではAI技術の核心を担っています。

同社が今後どのように規制対応を進めるのか、また技術貿易戦争の中でどのようにその地位を守るのかが注目されています。

エヌビディアに対する中国や他国の調査が、同社の事業戦略や市場支配にどのような影響を及ぼすか、投資家にとって重要な局面を迎えています。

*過去記事はこちら  エヌビディアNVDA

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