配当を支払う優良企業、例えばJPモルガン・チェース(JPM)やメルク(MRK)などは、今後の1年間で好調なパフォーマンスを見せる可能性があると投資家たちは期待しています。ハイテク株が割高に見える中、金利低下が債券の魅力を損なう可能性があり、配当株が投資先として再評価されているのです。
配当株は経済見通しが不透明な時や市場が下落する局面で投資家に選ばれることが多いです。特に公益事業や生活必需品などの安定した収益を生むセクターが注目されます。しかし、株式市場が上昇しているときにはこれらの銘柄は後れを取る傾向があります。2020年以降、テスラ(TSLA)やエヌビディア(NVDA)のような大型ハイテク株が市場をけん引してきたため、この傾向は顕著になっています。
配当株のパフォーマンスと投資の好機
今年はS&P500指数と配当株のパフォーマンス格差がさらに広がっています。しかし、ローガン・キャピタル・マネジメントのポートフォリオマネージャー、クリス・オキーフ氏は「こういう時こそ配当株を買うべきだ」と話しています。
同社の配当銘柄ポートフォリオでは、金融株の比率を増やしており、リージョンズ・ファイナンシャル(RF)を新たに追加しました。また、ビザ(V)やレイモンド・ジェームズ・ファイナンシャル(RJF)が最も比率が高い銘柄です。同氏は、医療株が割安であり、これらのセクターは今後配当を増やす可能性が高いとも述べています。
これは配当投資家にとって朗報です。というのも、大型米国企業の配当は市場全体の上昇に比べて伸び悩んでいるからです。先週、S&P500の配当利回りは1.19%を下回り、過去20年間で最低水準に達しました。
配当株の歴史的な動きと課題
S&P500配当貴族指数は、過去25年間連続で配当を増やした66社を含んでいます。しかし、2020年以降、この指数のパフォーマンスは市場全体に後れを取っています。配当銘柄は2022年に一時的に復調しましたが、2023年には再び利上げの影響で債券やマネーマーケットファンドのリターンが配当株を上回りました。
今年のS&P500指数は配当込みで28%のリターンを記録しましたが、S&P500配当貴族指数のリターンは14%にとどまりました。ブラックロック、チャールズ・シュワブ、バンガードの配当ETFも13%から20%の範囲で推移しています。
配当株の復活の可能性
バンク・オブ・アメリカのアナリスト、オサン・クォン氏によると、2025年にはS&P500企業の配当が全体で10%増加するとの見通しが立っています。その背景には、投資家が現金配当を求めていることがあります。
需要の高まりを示す兆候として、大手ハイテク企業も配当を支払うようになってきました。今年初めて配当を開始したメタ・プラットフォームズ(META)やアルファベット(GOOGL)は、第3四半期の米国配当成長の約25%を占めました。
また、先週、AT&T(T)は株主に対して今後3年間で400億ドル以上を配当や自社株買いの形で還元すると発表し、株価が大きく上昇しました。同じく、ウォルト・ディズニー(DIS)は来年の年間配当を33%増加させる計画を明らかにしました。
配当株の投資戦略における位置付け
新政権の下で高配当株がどう動くかを予測するのは簡単ではありませんが、配当の安定性に注目した投資が有効となる可能性があります。たとえば、シンプリー・セーフ・ディビデンズの創設者ブライアン・ボリンジャー氏は、「2016年の大統領選挙後も一部セクターが短期的に市場を上回ったが、持続しなかった」と述べています。
ハバフォード・トラストは、S&P500配当貴族のジョンソン・エンド・ジョンソン(JNJ)やコカ・コーラ(KO)の株を1979年の設立以来保有し続けています。今年、同ファンドはアルファベットの配当開始を受けて株を購入し、エヌビディアの株式分割と配当増加を受けて同社の株も新たに加えました。
まとめ
現在、配当株の利回りは確かに下がっていますが、安定した配当収入を得る手段として、特に不安定な市場では魅力的な選択肢となり得ます。例えば、アルトリア・グループ(MO)やフィリップ・モリス・インターナショナル(PM)といったタバコ株、ファイザー(PFE)やメルクといった医療株が高い配当利回りを提供しています。
配当株への投資を検討する際には、企業の収益力や配当の増加余地を見極めることが重要です。持続可能な収益性を持つ企業に注目すれば、長期的な収益を期待できます。
*過去記事はこちら 配当株