アップスタート(UPST)は、2020年12月に1株20ドルで株式公開しました。同社は、人工知能(AI)を活用した貸付プラットフォームを提供し、歴史的な低金利の中で大きく成長しました。株価はわずか12か月で20倍以上の401ドルに到達しましたが、その後のFRBによる金利引き上げを受けて、消費者のローン需要が減少し、株価は大幅に下落しました。
2024年11月末現在、アップスタートの株価は回復基調にあり、約79ドルまで上昇しています。同社のAI技術が依然として競争優位を持つ中、長期的な成長の可能性に注目が集まっています。
AIで貸付業界を刷新するアップスタートの取り組み
歴史ある銀行は、1989年以来FICOスコアリングシステムを利用して借り手の信用力を評価してきました。しかし、アップスタートは、この手法が時代遅れであると考え、1600以上の指標を分析するAIアルゴリズムを開発しました。この技術は、借り手の返済能力をより正確に把握し、適正な金利を算出するのに役立っています。
さらに、アップスタートのAIモデルは融資決定の91%を自動化する能力を持ち、人間による審査の必要性を大幅に削減しています。同社の最新モデル「M18」は、各申請者に対して100万回の予測を行い、従来のモデルを大きく上回る精度を実現しました。この技術革新により、従来の方法では見落とされていた多くの融資案件を見つけ出すことが可能になっています。
主力商品は無担保個人ローンですが、有担保自動車ローンや住宅担保貸付(HELOC)の分野でも拡大を続けています。現在の低金利環境はこれらの分野への需要を再び高めており、アップスタートの成長を支えています。
2024年第3四半期の好調な売上成長
アップスタートは、融資の承認プラットフォームを運営しており、通常は提携銀行や信用組合が融資を実行します。しかし、金利が高騰した2022年と2023年には、一部の融資を自社資金で実行せざるを得ない状況に陥りました。これにより、同社は信用リスクを抱えることになり、投資家の不安を引き起こしました。
現在、同社は第三者資金調達パートナーとの契約を拡大し、ブルー・オウルとの新たな契約では今後18か月間に20億ドル相当のローンを買い取る予定です。これにより、融資需要の増加を十分に吸収できる体制が整いつつあります。
2024年第3四半期には、無担保個人ローンの組成件数が前年同期比で65%増加し、18万6786件に達しました。自動車ローンも3か月前から53%増加しています。同時期の売上は1億6200万ドルとなり、前年同期比で20%増加しました。この成長率は、第2四半期の減少からの反転を示しており、同社の回復基調を裏付けています。
アップスタートの株価上昇が期待される理由
アップスタートの株価は2022年の最安値から約500%上昇しており、回復は進行中です。同社の2024年の売上は5億8750万ドルに達すると予測されており、前年から14%の増加が見込まれています。さらに2025年には、売上が8億1270万ドルに達し、成長率は35%に加速すると予想されています。
アップスタートの現在の売上高比率(P/S)は12.4であり、過去の平均を上回っていますが、2025年の売上予測に基づくと8.8に低下する見込みです。この数値は、同社の評価が依然として割安である可能性を示唆しています。
また、同社がターゲットとする市場規模は、無担保個人ローン、自動車ローン、住宅ローン、中小企業向けローンを含めて年間3兆ドルに達するとされています。これまでの融資総額が約400億ドルであることを考慮すると、アップスタートにはまだ大きな成長余地が残されています。
長期的な視点での投資機会
アップスタートのAIベースの貸付プラットフォームは、貸付業界の既存の枠組みを変革する可能性を秘めています。現在の低金利環境と市場回復の流れを活かし、同社はさらなる成長を目指しています。長期的な視点で同社の戦略に注目し、投資機会を捉えることが大切です。
今後数年間、アップスタートの成長と市場での地位向上が期待される中、投資家にとってはポートフォリオに組み入れる好機かもしれません。
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