ブラックフライデーの売上が過去最高を記録し、人工知能(AI)がオンライン小売の主役として台頭しています。アドビ(ADBE)のアナリティクスデータによると、2024年の米国におけるブラックフライデーのオンライン支出は108億ドルに達し、前年より10.2%増加しました。これは、AIの進化がオンラインショッピング体験を向上させたことが背景にあります。
生成AIが小売業に革命を起こす
アドビは、生成AIを活用したチャットボットが小売業界で大成功を収めたと報告しています。これにより、小売サイトのトラフィックが前年比で1,800%増加しました。このようなAIツールは、割引商品を見つけたり商品の比較を行ったりするだけでなく、迅速なチェックアウトを可能にすることで、消費者のショッピング体験を大幅に向上させました。
セールスフォース(CRM)の消費者インサイト担当ディレクターであるカイラ・シュワルツ氏によると、AIを活用したカスタマーサービスを導入しているデジタル小売業者は、導入していない業者と比較してコンバージョン率が9%高くなっています。この増加率は、利益率の重視が求められる業界にとって大きな転換点となっています。
ブラックフライデーのオンライン売上データ
セールスフォースによると、2024年のブラックフライデーにおける米国のオンライン売上高は175億ドルに達し、前年比で7%増加しました。一方、アドビの報告では、モバイルによるオンライン販売が全体の55%を占め、売上は59億ドル(前年比12.1%増)に達したとされています。この差は、データ収集および分析方法の違いに起因しています。
アドビは実際のオンライン取引データを中心に分析し、セールスフォースは15億人以上の消費者データをもとに、より幅広い小売業界のトレンドを推定しています。
実店舗への影響と地域別の来店傾向
一方で、実店舗の来店客数は全米で減少しました。小売分析企業リテールネクストによれば、ブラックフライデーの来店客数は2023年に比べて3.2%減少しました。特に吹雪に見舞われた中西部では来店客数が7%減少しましたが、他地域の減少率は比較的小さく、南部で3.5%、西部で3.2%、北東部では2.1%の減少にとどまりました。
モバイルショッピングと後払いサービスの成長
モバイルショッピングの拡大も顕著で、スムーズな決済を可能にするモバイルウォレットの利用率は41%増加しました。また、「BNPL(今買って後で払う)」サービスの売上は6億8,600万ドルに達し、そのうち80%近くがモバイルを通じて行われました。
人気商品と割引率の推移
おもちゃはオンラインで特に人気を集め、ハリー・ポッターのレゴセットやディズニープリンセスの人形などが売上を牽引しました。10月と比較して売上は622%増加しました。アドビのデータによると、おもちゃは平均27.8%オフ、電子機器は27.4%オフ、アパレルは22.2%オフという高い割引率を記録しました。ただし、セールスフォースの報告では、米国全体の平均割引率は昨年より3%減少しています。
サイバーウィークへの期待
ブラックフライデー後もオンラインショッピングの勢いは衰えず、サイバーマンデーに向けてさらなる成長が期待されています。セールスフォースは、2024年のサイバーマンデーに米国の消費者が135億ドル近くを費やすと予測しています。また、アドビは、感謝祭からブラックフライデー、サイバーマンデーまでの「サイバーウィーク」期間中にオンライン売上が406億ドルに達すると見込んでいます。
まとめ
AI技術、とりわけ生成AIの進化は、ブラックフライデーをはじめとするショッピングホリデーの様相を一変させています。消費者がスマートフォンやAIを積極的に活用することで、小売業界のデジタルシフトが一層加速しており、この流れは今後も続くことが予想されます。