テキサス州オースティンに拠点を置くコア・サイエンティフィック(CORZ)は、ビットコインのマイニングとAIデータセンターという2つの異なる事業領域で挑戦を続けています。今年、同社は倒産危機を乗り越え、株価が400%上昇するほどの躍進を遂げました。
経営陣は、長期的な収益安定性を重視しており、現在の成長戦略の中心に据えているのはAIデータセンター事業です。
AIデータセンターへの注力
コア・サイエンティフィックの最高執行責任者(COO)であるマット・ブラウン氏は、同社の方向性について次のように語ります。「長期的に安定したキャッシュフローと予測可能な利益を重視しているだけです」。
ビットコインのマイニングは高い収益ポテンシャルを持ちながらも、価格変動の激しさが課題です。一方で、AIプロバイダー向けクラウドサービスの提供を通じて安定的な売上を期待できると述べています。
2024年には、どちらの事業も成長が期待されています。ビットコインは116%の価格上昇を記録しており、AIデータセンターはテクノロジー企業のAI需要により市場が拡大しています。
信頼性の高い電力供給が成功の鍵
コア・サイエンティフィックが運営する9つの施設は、6州にわたるグリッド接続型倉庫で構成されており、数十万世帯分の電力供給能力を備えています。この電力インフラが、同社のビジネスを支える重要な基盤となっています。
同業他社の多くもデータセンター事業へ移行していますが、コア・サイエンティフィックほど成功を収めている企業はほとんどありません。
破産危機からの復活
2024年の年初、コア・サイエンティフィックは破産保護を申請していました。2022年のSPACを通じた株式公開後、多額の負債を抱え、ビットコイン価格の下落に直面しました。しかし、1月に4億ドルの負債削減を達成し、業績は急回復しました。
同社は、暗号資産のマイニングからAIデータセンターへの方向転換を迅速に進め、AIクラウドサービスに特化したデータセンターの運営に注力しています。
Coreweaveとの契約でさらなる成長を期待
6月には、Coreweaveとの契約を通じてAIクラウドサービス向けのデータセンタースペースを提供することに成功しました。この契約により、コア・サイエンティフィックは12年間で87億ドルの売上を見込んでいます。
Coreweaveは、エヌビディア(NVDA)と密接な関係を持ち、AI革命を支える急成長企業の一つです。同社は高性能GPUの初期顧客として、AI市場での競争力をさらに高める計画を進めています。
将来の売上予測と市場拡大
アナリストは、コア・サイエンティフィックが2025年に黒字化を達成し、2027年には1株当たり利益が10倍に増加すると予測しています。同社の株価は、2027年の予想売上の約13倍で取引されています。
契約済みの総電力容量1,200メガワットのうち、約800メガワットはデータセンター契約に、残りの400メガワットはビットコインのマイニングに割り当てられています。さらに、既存施設の効率向上や新たな土地の取得による事業拡大も視野に入れています。
高性能データセンターでの技術革新
同社は、通常のデータセンターを短期間でハイテク施設に改装し、液冷装置や高出力電力供給の技術革新を進めています。標準的なデータセンターのサーバーラックが6~7キロワットを必要とするのに対し、コア・サイエンティフィックは400キロワットへの容量拡大を目指しています。
これらの技術革新により、同社はAI市場の需要増加に迅速に対応する準備を整えています。
AI革命とコア・サイエンティフィックの未来
AIシステムの構築需要が増加するにつれ、同社のデータセンター事業の成長はさらなる加速が期待されています。2024年以降の事業展開は、AI市場の進化と共に大きな注目を集める見込みです。
コア・サイエンティフィックの事例は、事業戦略の転換と技術革新が企業の未来をどれほど変えるかを示す象徴的なケースといえます。