近年、米国株式市場において電気自動車(EV)メーカー、テスラ(TSLA)はその存在感を大きく高めてきました。イーロン・マスク氏率いるこの企業は、大統領選挙以降の期待感から株価が急騰しましたが、今後の動向には注意が必要です。トランプ次期政権の政策変更が、EV市場全体にどのような影響を与えるのかを考察します。
テスラ株、トランプ政権で一服感が出る理由
トランプ次期政権における自動車政策への期待が高まる一方で、テスラ株は短期的な調整局面を迎えています。具体的な政策が明らかになるにつれ、現実的な課題も浮かび上がりました。
特に注目されるのが、EV購入者への税額控除の廃止案です。この動きが実現すれば、テスラをはじめとするEVメーカーに対する市場圧力は一段と強まります。UBSのジョセフ・スパック氏も「トランプ政策によるハネムーン相場は長続きしない」と予測しており、テスラの競争環境がさらに厳しくなる可能性を示唆しています。
EV市場の競争激化:中国勢や規制変更の影響
中国勢がEV市場で存在感を示す中、北米市場では競争が激化しています。トランプ政権が環境規制の緩和を進める一方で、カリフォルニア州のように州独自の規制を強化する動きも見られます。同州のニューサム知事は、連邦政府の税額控除廃止に対応する形で独自の控除を復活させると発表しましたが、テスラは除外対象とされるなど、複雑な状況が続いています。
バイデン政権下のIRA政策とその影響
バイデン政権下では「インフレ抑制法(IRA)」に基づき、EV購入者に最大7,500ドルの税額控除を提供する政策が実施されました。この政策はEV市場を活性化させることを目的としていましたが、補助金対象の車種が北米生産に限定され、中国製部品の使用制限も課されるなど、対中競争が強化される形となりました。
その結果、新興EVメーカーの多くが補助金の恩恵を受けられず、競争環境がさらに厳しくなりました。一部の企業は市場から撤退を余儀なくされ、EV市場全体の普及ペースに鈍化の兆しが見え始めています。
EV市場の未来:次の主役は誰か?
トランプ次期政権がどのような政策を展開するのかは不透明な部分も多いですが、以下のポイントが注目されています。
- EV税額控除の廃止とその影響
消費者にとってのEV価格が上昇すれば、購買意欲の減退が予想されます。 - 輸入EVの「抜け穴」政策
バイデン政権下で行われたリース車両への補助金適用が、輸入車の競争力を高める可能性があります。 - 新たな技術革新と市場の主役交代
EV以外の選択肢(ハイブリッド車や次世代エネルギー車など)が主流になる可能性も否定できません。
市場は現在、次なる主役を探している段階です。今後の政策動向と市場の反応を注視することが求められます。
まとめ:EV市場の行方と投資家へのメッセージ
テスラをはじめとするEVメーカーは、新たな政策や競争環境の中で試練の時を迎えています。税額控除の廃止や環境規制の変化は、企業の戦略に大きな影響を与えそうです。投資家としては、政策動向や市場のトレンドを綿密に分析し、中長期的な視点で判断することが重要です。
*過去記事はこちら テスラ TSLA