本日11月20日の米国市場の終了後に、エヌビディア(NVDA)が第3四半期の決算を発表します。エヌビディアの決算報告は、単なる同社の株価動向にとどまらず、米国株市場全体、特にテクノロジーセクターに与える影響が注目されています。バンク・オブ・アメリカが追跡するロングオンリーファンドの約70%がエヌビディア株を保有しており、さらにこれらのファンドはモメンタム株に対してオーバーウェイトの状況です。
エヌビディアはモメンタム投資の代表銘柄とされており、もし期待を裏切る結果となれば、「マグニフィセント・セブン」と呼ばれる他の有力テック株にも広範囲な売り圧力が及ぶ可能性があります。しかし、現時点では失望をもたらす結果は考えにくく、以下の3つの理由から、エヌビディアは今回の決算で収益および売上成長の予想を上回る可能性が高いと見られています。
1. AI関連支出の拡大 ― ハイパースケーラーによるGPU需要が急増
AIの成長を支える「ハイパースケーラー(マイクロソフト、アルファベット、メタ、アマゾンなどの大規模クラウド事業者)」は、AI対応の高速グラフィックスプロセッサユニット(GPU)への投資を増加させています。これらの企業は第3四半期の資本支出(Capex)が予想を4%上回り、さらに2024年から2025年にかけての資本支出見通しを引き上げました。
ウィリアム・ブレアのアナリストによると、2024年にはハイパースケーラーの合計資本支出が63%増加し、2025年も18%の成長が見込まれています。これは「AI軍拡競争」と呼ばれ、AIモデルのトレーニングや生成AIを支えるために必要なインフラ投資が急速に進んでいる結果です。
投資の合理性が支持される理由
1999~2000年のインターネットバブル期の非効率的な投資とは異なり、AI関連支出は合理的であり、企業の売上成長や利益率の向上に貢献しているとの評価が出始めています。例えば、マイクロソフトはAIチャットボットの導入によりカスタマーサポートにかかるコストを大幅に削減しており、グーグルではコードの約25%がAIによって生成されています。
2. 資本支出の内訳がサーバーやGPUへシフト
ハイパースケーラーの資本支出は、従来型のインフラ設備から、サーバーやGPUを含むITインフラ設備にシフトしています。この流れは、AI関連のハードウェア需要をさらに後押しし、2025年まで強い成長が続くと予想されています。
3. AIチップの供給不足 ― 強気相場を支えるカギ
第3四半期の決算発表では、マイクロソフトやメタがエヌビディア製GPUの供給不足について言及しています。需要が供給を上回っている状況は、AIチップ企業に価格設定力をもたらしています。台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)も、AI関連のGPU需要が2025年まで供給を上回る見込みであることを明らかにしました。
エヌビディア株は過大評価されていない?
Thornburg International Growth Fundのポートフォリオマネージャーであるショーン・サン氏によれば、ハイパースケーラーの資本支出増加は、エヌビディアの年間収益に1株あたり5ドルの貢献をもたらすと推定されています。この収益に30倍の株価収益率(P/E)を適用すると、1株150ドルの価値があると見積もられています。
一方で、エヌビディアに対抗するアドバンスト・マイクロ・デバイセズ(AMD)は、「割安株」として注目されています。AMDはAIアクセラレーターチップ市場で10~15%のシェアを獲得する可能性があり、ウォール街の予想(約5%)を大きく上回る見込みです。
カスタムチップ市場の可能性
エヌビディアは汎用AIチップを提供していますが、ハイパースケーラーは特定のタスクに特化したカスタムAIチップを求めています。ブロードコム(AVGO)やマーベル・テクノロジー(MRVL)は、こうしたカスタムチップ市場で重要なプレーヤーとして位置付けられています。ブロードコムはアルファベットやメタに、マーベルはアマゾンやマイクロソフトに供給しています。
AI投資の未来は?
Gabelli Fundsのアナリストによれば、2025年もAIチップへの支出は引き続き強い成長を示す見込みです。ただし、2026年以降にその支出が持続可能かどうかは未知数です。
まとめ
エヌビディアの今回の決算発表は、単なる1企業の業績を超え、AI関連の成長ストーリー全体を占う重要なイベントです。ハイパースケーラーの資本支出の増加や、AIチップの供給不足が続く中で、エヌビディアは引き続き重要な役割を果たすと考えられます。一方で、AMDやブロードコム、マーベルなどの競争相手にも注目し、投資ポートフォリオの多様化を図ることが投資戦略として有効です。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA