ヌー・ホールディングス(NU)は中南米最大級のフィンテック銀行「ヌーバンク(Nubank)」を所有するケイマン諸島の企業です。ケイマン諸島に拠点を置く理由は、税制上のメリットや柔軟な規制環境が企業活動にとって有利であり、国際的な資金調達の円滑化にも寄与するためです。ブラジルを中心に、銀行サービスが不足する層へデジタルバンキングを提供し、業界の革新者として注目を集めています。ウォーレン・バフェットやキャシー・ウッドといった著名投資家からも支持を受け、その成長可能性は広く認識されています。
ヌーバンクの会社概要
ヌーバンクは、2013年にダビド・ベレス氏らがブラジル・サンパウロで設立したフィンテック企業です。物理的な支店を持たず、完全にオンラインで金融サービスを提供し、ラテンアメリカ最大のフィンテック銀行となり、ブラジル、メキシコ、コロンビアで1億人以上の顧客を抱えています。同社の主なサービスには年会費無料のクレジットカード「Nubankカード」、デジタル口座「NuConta」、個人向けローン、生命保険、投資商品などがあり、これらはすべてモバイルアプリを通じてリアルタイムで管理可能です。
ヌーバンクは、2017年にユニコーン企業となり、その後も急速に成長を遂げ、2021年12月にはニューヨーク証券取引所に上場、評価額は450億ドルに達しました。また、ウォーレン・バフェット氏のバークシャー・ハサウェイも同社に10億ドルを投資しています。ヌーバンクは、銀行サービスが行き届いていない層をターゲットに低コストで柔軟なサービスを提供し、ラテンアメリカの金融業界に革新をもたらしています。
ヌーバンクのターゲット市場
ヌーバンクはブラジルで「underbanked(銀行サービス不足)」、メキシコで「unbanked(銀行サービス未提供)」と呼ばれる銀行サービスが十分でない大規模な消費者層をターゲットにしています。デジタルネイティブなアプローチで、従来の銀行の高コスト構造に比べて優れたコスト効率を持ち、急速に市場でのシェアを拡大しています。具体的には、物理的な支店を持たない運営、クラウドコンピューティングやAIを活用した業務プロセスの効率化、シンプルな製品設計により運営コストを削減しています。すでにブラジルの成人の約半数がヌーバンクの顧客となり、メキシコ市場でも急成長を遂げています。
高成長を支える強みとビジョン
ヌー・ホールディングスはユーザーが現金からデジタル決済、さらにクレジットへ移行する中で利益を拡大しています。具体的には、デジタル決済やクレジットカードの利用に伴う取引手数料、リボ払いなどに適用される金利収入、保険商品や投資サービスなどの付加価値サービスからの手数料を通じて収益を増加させています。コスト面での優位性と銀行サービスの供給が少ない層へのアプローチにより、他の銀行が真似しにくいビジネスモデルを確立しました。
「ヌーバンクは、低コストと柔軟なサービスで中南米の金融業界に変革をもたらしている」と、フォントベルのラミズ・チェラット氏は評価しています。
メキシコ市場での成長期待
メキシコでは、銀行口座を持たない「unbanked(アンバンクド)」の成人が約6,600万人存在し、これは成人全体の約51%に相当します。この大規模な未銀行化人口は、金融サービスの普及において大きな成長の余地を示しています。ブラジル市場同様、ヌーバンクはここでも預金残高の増加や顧客獲得で良好な成績を示しており、中南米全体での成長が期待されています。
投資リスクとその対応策
今年の第2四半期には不良債権がやや増加しましたが、ヌー・ホールディングスはリスク調整後の純金利マージンが改善しており、債権延滞に対する適切な価格設定ができていると見られています。不良債権の増加の背景には、消費者信用市場の拡大に伴うリスクの増加があり、ヌー・ホールディングスは信用リスクの管理を強化するため、リスク調整済みの金利設定や引当金の計上を行っています。また、信用供与に対する引当金を計上しており、リスク管理がしっかりしている点が評価されています。
「NPL(不良債権)だけに注目すると誤った判断を招く可能性がある」と、ジェンソン・アンド・アソシエーツのザック・ギル氏は指摘しています。
今後の売上見通し
ヌー・ホールディングスは2023年に初の利益を計上し、今後も30%の売上増加が予測されています。2024年には1株当たりの利益が43%増加する見通しで、今後も成長が見込まれています。景気後退が低所得顧客に影響を及ぼす懸念はありますが、ヌー・ホールディングスの顧客層の拡大により、業績には依然強気な見方がされています。
他地域への展開可能性とグローバル成長
ヌー・ホールディングスは正式な発表はしていないものの、他の地域への展開の可能性について言及しています。特に、銀行サービスが行き届いていない人口の多いインドネシアやフィリピンなどの東南アジア地域での成長の潜在力が期待されています。特に、銀行サービスが行き届いていない人口の多いインドネシアなどでの成長の潜在力が期待されています。
「ヌーバンクのビジネスモデルは、他の新興市場にも拡大できる柔軟性があり、成長が加速する可能性が高い」とチェラット氏は述べています。
まとめ:ヌー・ホールディングスは今が買い時か?
ヌー・ホールディングスの株価は2024年に入り約90%上昇し、現在の株価収益率は24倍ですが、過去5年間の3桁の平均と比較しても依然として低水準です。また、最近の株価下落で19倍近くに落ち着き、長期的な成長に期待する投資家にとっては魅力的な買いのタイミングとなる可能性があります。
ヌー・ホールディングス(ヌーバンク)は、銀行サービスが行き届かない層をターゲットにしたデジタルバンキングで急成長しています。今後もブラジルやメキシコ市場での拡大、さらには他の新興市場への進出が期待され、成長性を重視する投資家には引き続き注目すべき銘柄と言えます。