2024年の大統領選挙でドナルド・トランプ氏が勝利して以来、S&P500種株価指数は急上昇を続けており、その勢いは止まる気配がありません。トランプ氏のビジネスフレンドリーな政策と減税への期待が、株式市場に「アニマル・スピリッツ」(経済成長を促進する投資家や企業の積極的な活動を指す)を呼び戻し、ウォール街のストラテジストたちは市場の新たな高値更新を予想しています。本記事では、ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ氏の見通しや、ゴールドマン・サックスなどの異なる視点も踏まえながら、S&P500の今後の動向について詳しく解説します。
エド・ヤルデニ氏の強気予想とトランプ政策の影響
ヤルデニ・リサーチのエド・ヤルデニ社長は、S&P500種指数が2024年末までに6,100に達し、現在の水準を約2%上回ると予想しています。さらに、2025年末には7,000、2026年末には8,000、そして2034年末には10,000に達すると見ています。この予想は、トランプ大統領の再選によるビジネスフレンドリーな政策の影響を強く反映したものです。
トランプ氏の政策の中核は、法人税率を現行の21%から15%に引き下げることです。例えば、2017年の税制改革では法人税率が35%から21%に引き下げられ、企業の利益が大幅に増加し、株式市場に好影響を与えました。同様に、今回の引き下げも企業のキャッシュフローを増加させ、投資や配当に回す余裕が増えると考えられます。この税制改正が企業の利益率を押し上げ、S&P500の業績予想と利益率予想が引き上げられることが見込まれています。ヤルデニ氏は、市場が「アニマル・スピリッツ」の初期兆候を見せていると述べており、投資家のセンチメントが改善していることを強調しています。
S&P500の10年後の見通し:楽観論と懸念の狭間
ヤルデニ氏の予想では、S&P500は今後10年間で現在の水準から約66%上昇し、年率約11%のリターンが期待されるとしています。このリターンは、S&P500の長期平均年率リターンとほぼ一致しており、過去の実績に基づいた堅実な見通しと言えます。
一方で、ゴールドマン・サックスのストラテジストたちは、S&P500の年間リターンが今後10年間で約3%にとどまるとの慎重な予想を示しています。高いバリュエーションや、インフレ指標の粘り強さによるFRBの利下げ停止への懸念などが、株価の上昇を抑制する可能性があると指摘されています。
バリュエーションの見方と今後の投資戦略
現在、S&P500は2025年の収益予想の22.2倍で取引されており、これは過去5年平均の19.6倍、20年平均の15.8倍を上回る高い水準です。このような高いバリュエーションは、企業の将来的な成長期待が既に株価に織り込まれていることを意味します。これにより、今後のリターンが限定されるリスクが高まり、特に市場の期待が失望に終わった場合、株価が大きく下落する可能性もあります。
しかし、一方で経済の安定成長や企業の利益成長が続けば、高いバリュエーションが持続することもあり得ます。この高いバリュエーションは市場の熱狂的なセンチメントを反映しており、一部のアナリストは今後のリターンが控えめになる可能性を示唆しています。しかし、ヤルデニ氏は「高いバリュエーションが必ずしも売りのシグナルではない」と指摘し、景気後退の可能性が低いため、企業収益がより速く、より長く成長する可能性が高いと述べています。
また、エバコアのジュリアン・エマニュエル氏も、S&P500が2025年6月までに6,600に達するとの予想を示しており、「エクスペンシブには、より割高になり、より大きな利益とともに長く続くという歴史がある」と強調しています。
まとめ:トランプ再選によるS&P500の将来性と投資家への示唆
トランプ大統領の再選により、S&P500は今後も力強い上昇を続ける可能性があります。この可能性は、法人税率の引き下げや規制緩和が速やかに実施され、企業の収益が拡大することを前提としています。加えて、経済の安定成長とインフレの抑制が続くことが条件であり、これらの条件が整えば上昇の確度は高まると考えられます。法人税の引き下げや規制緩和といった政策が企業の収益性を押し上げ、市場に楽観的なセンチメントをもたらしています。しかし、高いバリュエーションやインフレの粘り強さといったリスク要因にも注意が必要です。
投資家としては、長期的な視点を持ちながらも、市場の変動に柔軟に対応することが求められます。今後の政策動向や経済指標に注視しつつ、ポートフォリオのリスク管理を徹底することが、成功への鍵となります。