11月6日、米国の大手チップメーカーであるクアルコム(QCOM)は、第4四半期の決算でアナリストの予想を上回る好業績を報告し、市場にポジティブなインパクトを与えました。調整後の1株当たり利益(EPS)は2.59ドルで、ファクトセットのコンセンサス予想である2.56ドルを超え、売上高も前年同期比18%増の102.4億ドルに達しました。これを受け、クアルコムの株価は時間外取引で6.5%上昇し、184.10ドルを記録しています。
しかし、クアルコムの成長にはリスクも潜んでいます。本記事では、同社の好調な業績と将来の成長機会、そして投資家が注目すべきリスク要因について詳しく解説します。
好調な業績と多角化の進展
クアルコムは、従来のスマートフォン向けチップだけでなく、モノのインターネット(IoT)や自動車向けチップに力を入れており、これが今期の好業績に寄与しています。第4四半期の売上内訳は以下の通りです:
- スマートフォン向けチップ:売上は61億ドルで、前年同期比12%増加しました。
- IoT向けチップ:売上は17億ドルで、前年比22%増とコンセンサス予想の15億ドルを上回りました。
- 自動車向けチップ:売上は8億9900万ドルに達し、前年比68%増を記録しました。
さらに、クアルコムは新しいPCチップ「Snapdragon Xシリーズ」やバーチャルリアリティチップ「XRシリーズ」を投入しており、これらの製品の発売が第4四半期の業績を後押ししたと見られます。クアルコムは11月の投資家説明会において、Snapdragon XおよびXRシリーズの今後のアップデートと売上予測を発表する予定で、今後の成長が期待されています。
ライセンスビジネスも好調
クアルコムのライセンスセグメントも好調で、第4四半期の売上高は21%増の15億ドルに達しました。同社の全体のチップセグメント売上高は前年比18%増加しており、特にライセンス部門の成長が目立ちます。
2025年に迫るリスク要因:アップルとの関係とアームとの裁判
好調な業績の一方で、クアルコムには注意すべきリスク要因もあります。主にアップルとアーム・ホールディングスとの関係が挙げられます。
アップルの独自5Gチップ開発によるリスク
アップル(AAPL)は、現在クアルコムから5Gチップを調達していますが、自社での5Gチップ開発に向けて取り組んでおり、2025年にはその成果がiPhoneに反映される可能性があります。バーンスタインのアナリスト、ステイシー・ラスゴン氏の推計によると、2024年度の最初の3四半期において、クアルコムの売上の約22%をアップルが占めているとされていますが、2026年までにはこのシェアが減少する見通しです。クアルコムのCFOであるアカシュ・パルキワラ氏は、「2026年のiPhoneではアップルからの売上シェアが20%にまで減少し、その後は契約が終了する見込み」と述べており、アップルの独自チップがクアルコムの売上に与える影響について警戒を示しています。
アーム・ホールディングスとの裁判
もう一つのリスクは、クアルコムがアーム・ホールディングス(ARM)と抱える知的財産権に関する裁判です。アームはクアルコムが自社の技術を無断で使用していると主張しており、12月16日に裁判が予定されています。この裁判の結果によっては、クアルコムの勢いがそがれる可能性があり、アームの売上にも影響を及ぼしそうです。両社が和解する可能性もありますが、現在のところ、両社の間には緊張が走っています。
投資家が注視すべきポイント
クアルコムは、スマートフォン向けチップの強固な基盤に加え、多角化による成長を実現しています。特に、自動車やIoT分野での事業拡大はポジティブな要素であり、投資家にとっては魅力的なポイントです。一方で、アップルとの関係の変化やアームとの訴訟といったリスクも無視できません。クアルコムの株価が今後の業績次第で上下する可能性があるため、リスク要因をしっかり把握し、長期的な成長を見込めるかどうかを慎重に判断することが求められます。
まとめ
クアルコムは引き続き成長のために多角化を進めており、IoTや自動車、PC、XRといった新たな分野への投資が功を奏しています。今後の課題としては、アップルの独自5Gチップ開発およびアームとの裁判が挙げられます。これらのリスクを慎重に見極めつつ、成長機会を活かしていく姿勢が重要です。