スーパー・マイクロ・コンピュータ( SMCI)の株価は、10月31日の取引で約15%急落し、3分の1の価値を失いました。同社は監査法人であるアーンスト・アンド・ヤング(E&Y)の突然の辞任に見舞われ、企業の「誠実性と倫理観」に疑問が呈されています。E&Yは同社の財務諸表への関与を望まず、経営陣や監査委員会の表明を信頼できないと判断して辞任に至ったとされています。この影響により、スーパーマイクロはわずか1日で時価総額90億ドルを失い、今後の見通しに不安が広がっています。
E&Y辞任の背景と影響
スーパーマイクロは、E&Yが提起した問題が過去の財務報告に再表示を必要とするものではないと強調し、E&Yの辞任に同意していないと述べています。しかし、8-K書類によれば、E&Yは2024年6月期の監査において、同社の会計や経営に関する深刻な懸念を持っていたことが示されています。この問題により、スーパーマイクロの10-K報告書は遅延しており、11月5日に予定されている業績更新の電話会議に注目が集まっています。
過去の会計問題と内部統制の改善
スーパーマイクロは、過去にもSECによる調査を受けて和解した経緯があり、約2億ドルの費用と売上を不正に計上した疑いがありました。この一連の出来事から、CEOのチャールズ・リャン氏は内部統制の強化に努めると表明しています。しかし、2023年1月にはショートセラーのスプルース・ポイント・マネジメントが関連当事者取引について問題提起を行い、さらに今年8月にはヒンデンブルグ・リサーチが新たな調査結果を発表しました。これらの疑惑がスーパーマイクロの信頼性を揺るがしています。
監査法人の辞任と株価への影響
監査法人の辞任が企業の株価に与える影響は重大です。特にE&Yのような大手監査法人が辞任する場合、企業の内部統制や会計管理に対する市場の信頼が大幅に低下する可能性があります。AlphaSenseのデータによれば、2007年の金融危機以来、監査法人の辞任がSECへの提出書類に頻繁に記載されるたびに、企業の株価は乱高下する傾向があります。
AIブームの中でのスーパーマイクロの位置付け
スーパーマイクロは今年、AI関連株の一つとして注目を集めており、マイクロソフト、、メタ、アルファベット、アマゾンなど主要テック企業がAIデータセンターに巨額の投資を行っています。スーパーマイクロはこれらのデータセンターに欠かせないコンピュータを供給する主要なサプライヤーですが、今回の監査法人辞任により成長トレンドに影響が及ぶ可能性があります。
将来の展望と投資家のリスク
E&Yの辞任に伴い、スーパーマイクロの投資家にとって、今後の業績に対するリスクが高まることが予想されます。ケンタッキー大学のブライアン・ブラッテン教授は、監査法人の辞任が業績予測の信頼性に影響を与える可能性があると指摘しています。今後、新しい監査法人の選定と財務報告の再確認を通じて、スーパーマイクロが市場の信頼を回復できるかが鍵となります。
まとめ
スーパーマイクロの株価下落とE&Yの辞任劇は、同社の会計やガバナンスに対する疑念を浮き彫りにしました。AIブームの恩恵を受けてきたスーパーマイクロにとって、今回の問題が成長路線にどう影響するかは不透明です。投資家にとっては、今後の新監査法人の選定や内部統制の強化が重要な注目ポイントとなります。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI