人工知能(AI)への投資がテクノロジー業界で熱い話題となる中、マイクロソフト(MSFT)もこのトレンドに積極的に参入しています。同社は直近の四半期に149.2億ドルもの巨額をAI関連の設備投資に費やしており、今後もさらに高い資本支出が見込まれています。しかし、市場の反応は必ずしも好意的とは言えず、株価も一時的に下落しました。この一方で、アナリストたちは異なる見解を示しており、長期的な視点からの成長性に期待を寄せています。本記事では、マイクロソフトのAI投資に対する市場の反応とアナリストの分析をもとに、今後の成長予測について考察します。
マイクロソフトのAI設備投資が示す戦略的意図
マイクロソフトは、クラウドコンピューティングプラットフォーム「Azure」やAI製品の成長を加速させるために、AI関連の設備投資を増加させています。2024年第2四半期にはAI製品だけで100億ドルの売上を目指しており、AIインフラ拡充による市場需要の取り込みが期待されています。しかし、今回の巨額投資については一部の投資家からの懸念も浮上しています。投資額の増大が短期的な収益を圧迫する可能性があるためです。
しかし、エバコアのカーク・マータン氏は、こうした懸念に対してポジティブな見解を示しています。同氏は、マイクロソフトが将来的な成長のために不可欠な設備投資を行っていると評価し、これが長期的には収益性向上に寄与するだろうと述べています。また、今回の投資額の約半分は長期的な拡張に向けたものであり、数年後には支出の正常化が見込まれるとのことです。この視点に基づき、マータン氏はマイクロソフトの目標株価を500ドルに設定し、「アウトパフォーム」の評価を再確認しました。さらに、最近の株価下落は長期的な視点で買いの好機であると指摘しています。
マイクロソフト株に対する異なるアナリストの見解
一方、D.A. ダビッドソンのアナリストであるギル・ルリア氏は、慎重な見解を示しています。ルリア氏は、設備投資の急増が成長速度を抑制するリスクがあるとし、マイクロソフトの目標株価を475ドルから425ドルに引き下げました。また、「AI需要の増加は続くが、供給面での遅れが成長の足かせになる可能性がある」と指摘しています。ただし、インフラ拡充により供給が増加すれば、後半には成長の加速が期待できるとも述べています。
また、モーニングスターのアナリスト、ダン・ロマノフ氏もAI需要の高まりに注目し、株式の適正価値を490ドルと評価しています。ロマノフ氏は、特にAzureの収益成長が来年に向けてさらに加速し、株価を押し上げる要因になると予想しています。このように、マイクロソフトのAI投資を肯定的に評価するアナリストは少なくありません。
株価動向と市場全体の比較
マイクロソフトの株価は10月31日に6%下落し、終値は406.35ドルでした。年初来の上昇率は8%で、これは同じくテクノロジー株が多く含まれるナスダック総合指数の21%や、ベンチマークであるS&P 500指数の20%に対して低めの成績です。これにより一部の投資家は慎重な姿勢を見せていますが、AIへの巨額投資が将来の成長エンジンとして期待されていることも事実です。
AI投資はマイクロソフトにとって成長のカギとなるか?
マイクロソフトのAI関連投資は、短期的には収益性に影響を及ぼす可能性があるものの、長期的には成長戦略の中核になると考えられます。多くのアナリストが示しているように、AIとクラウドの需要は今後も増加が見込まれ、マイクロソフトがインフラ整備を通じてこの需要に応えられるかどうかが重要なポイントです。株価が短期的に下落した現在は、長期投資家にとって「買いのチャンス」となる可能性があり、AI分野での成長性を考慮すると投資妙味があるといえます。
マイクロソフトのAI設備投資が今後の業績にどう反映されるかは不透明な面もありますが、市場とアナリストの見解を総合的に考慮すると、長期的なポテンシャルを持つ企業としての評価は揺るぎません。
*過去記事 マイクロソフト MSFT