サーバーメーカーのスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が会計監査人であるアーンスト・アンド・ヤング(EY)の突然の辞任を受け、株価が急落し、大きな波紋を呼んでいます。このニュースは、2024年6月30日に終了した会計年度の監査をEYが実施中であったことから、投資家に大きな影響を与えています。EYは辞任の理由として、スーパーマイクロ経営陣への信頼喪失と、財務諸表に対する関与を望まないとの姿勢を示しました。
EYの辞任理由とスーパーマイクロへの影響
スーパーマイクロは2023年3月にEYを会計監査人として雇用し、2024年会計年度の財務監査を依頼していました。しかし、EYはスーパーマイクロの経営陣や監査委員会に対する信頼を失い、適切な監査サービスの提供が困難であると判断し辞任しました。
EYは、証券取引委員会(SEC)への提出書類において、「最近の情報により、経営陣および監査委員会の表明を信頼できなくなったため辞任を決定した」と述べています。これにより、投資家の間でスーパーマイクロの財務の透明性や企業統治に対する懸念が強まり、同社株は大幅に売られました。
株価の急落と投資家へのインパクト
10月30日の取引において、スーパーマイクロの株価は一時32%下落し、約33.60ドルとなりました。この急落は、市場全体に影響を与える懸念が広がった結果でもあります。同社の株価は今年3月の最高値である118.81ドルから72%もの大幅な下落を記録しています。
スーパーマイクロの反応と今後の対応
スーパーマイクロは、EYの辞任に反対の意向を示し、「新しい監査人の選定に真剣に取り組んでおり、企業としての透明性と信頼性を確保するために全力を尽くしています」とコメントを発表しました。また、2024年6月30日会計年度の財務結果に関する再表示が必要になる可能性については否定的な見解を示し、11月5日に第1四半期の業績更新を発表する予定です。
過去数か月の課題
スーパーマイクロはここ数か月でいくつかの困難に直面しています。
- 8月:利益率の低下が売上予測に影響を与え、株価が20%下落。
- 同月:空売り調査会社ヒンデンブルグ・リサーチから「会計上の重大な問題や輸出管理の不備」についての指摘がありました。
- 8月末:SECへの財務報告の遅延を発表し、株価が19%下落。
その後も、司法省による調査やCEOチャールズ・リャン氏によるショートセラー報告への批判が続き、株価は依然として不安定です。
専門家の見解と今後の展望
EYの辞任について、コロンビア・ビジネス・スクールのロバート・ウィレンス教授は、「監査報告書が発行される前に監査人が辞任するのは極めて異例」とコメントしています。経営陣と取締役会の関係や取締役会の監督責任に問題がある可能性が高いと同教授は指摘しています。また、アナリストの間でも、今回の辞任が同社のガバナンスや財務の透明性に疑念を抱かせる要因とされており、ニーダムのアナリストチームは「買い」評価と60ドルの目標価格を保留しました。
投資家に向けた今後の展望
スーパーマイクロの株価は一時的に急落していますが、今後の動向は新しい監査人の選定や、11月5日の業績発表によって左右されそうです。例えば、迅速に新しい監査人を選任し、業績発表でポジティブな収益を示せば、投資家の信頼を回復し株価の安定につながる可能性があります。また、経営陣が透明性とガバナンスの強化に向けた具体的な計画を示すことで、今後の市場の不安を和らげることが期待されます。現在の株価水準はリスクを伴いますが、同社の成長戦略や新たなガバナンス構造の確立によって、回復の兆しが見える可能性もあります。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI