10月17日の米国市場において、TSMCとして知られる台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)の株価が急騰し、過去最高値を記録しました。これは、同社が発表した四半期決算が市場予想を上回り、2024年の売上高成長見通しを大幅に引き上げたことが背景にあります。TSMCは、世界的なAIハードウェアブームの恩恵を受け、半導体業界におけるリーダーシップをさらに強化しています。
四半期業績と成長見通し
TSMCは、2024年の米ドル建て売上高が30%増加すると予測しており、従来の20%台半ばからの上方修正となっています。さらに、2024年9月期の決算では、同社の純利益が前年同期比で54%増加し、3253億台湾ドル(約101億ドル)に達し、市場予想を大幅に上回りました。TSMCはエヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)といった主要顧客にチップを供給しており、AIブームの恩恵を大きく享受しています。
この好調な業績を受け、17日の米国預託証券(ADR)市場でTSMCの株価は9.8%上昇し、過去最高値を更新しました。一方、エヌビディアも同日に株価をわずかに上昇させましたが、その上昇率は1%未満にとどまっています。市場ではAI技術の発展とチップ需要の増加が引き続き期待されています。
AIと半導体市場の展望
TSMCのCEOである魏哲家氏は、「AI需要は今後本格化する」と述べ、AI関連半導体の需要はさらに強まるとの見方を示しました。また、エヌビディアのCEOの発言に触れつつ、チップ需要全体が「安定し、回復し始めている」と強調しました。
AIは今後も半導体市場を牽引する主要な分野となる見込みで、TSMCの3nmおよび5nmのノード技術、ならびに先進的なCoWoSパッケージング技術は、同社の競争力を一層強化する要素となっています。ブルームバーグ・インテリジェンスは、2025年のTSMCの売上高成長率を約25%と予測しています。
投資家への影響
TSMCの株価上昇は、世界中の投資家に安心感を与えました。特に、ASMLホールディングス(ASML)がチップ工場の拡張計画を中止したことにより、投資家の間でチップ需要に対する懸念が広がっていましたが、TSMCの強気な見通しはこれらの不安を払拭しました。AIチップの需要は引き続き増加すると予想され、TSMCはその成長機会をしっかりと捉えています。
ウェドブッシュのアナリストも、「AI主導の成長はまだ終わりが見えない」と述べ、TSMCの目標株価を引き上げ、アウトパフォーム評価を維持しました。
地政学的リスクと今後の展開
TSMCはAIチップ市場の主要プレイヤーでありながら、地政学的リスクにも直面しています。バイデン政権が、エヌビディアなどの米国企業によるAIチップの販売を特定の国に制限する可能性があることが、今後の市場にどのような影響を与えるか注視されています。
しかし、長期的にはTSMCの国際展開が急速に進んでおり、ヨーロッパ、日本、アリゾナ州、ドイツでの新たな工場建設が計画されています。これにより、同社は地政学的リスクを軽減し、さらなる成長が期待されています。
まとめ:TSMCの投資機会と今後の展望
TSMCは、AI技術の進展とチップ需要の中心的存在として、引き続き半導体市場を牽引していくでしょう。同社の技術的優位性と市場シェアの高さは、投資家にとって非常に魅力的です。エヌビディアなどAI関連企業との強力な関係や国際的な拡大戦略により、TSMCは今後も成長を続けると予想されています。
AI市場の発展を背景に、TSMCは長期的に成長が期待される投資先として注目すべき存在です。今後も同社の動向とAI市場の展開に注目が集まります。