オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング(ASML)は、2024年第3四半期の受注が市場予想を大幅に下回り、2025年の業績見通しも下方修正したことで、株価が急落しました。この発表はアナリストや投資家にとって大きな衝撃となり、同社株は10月15日のアムステルダム市場で1998年以来最大の下落を記録しました。
第3四半期の受注額が市場予測を大きく下回る
ASMLの2024年第3四半期の受注額は26億ユーロ(約28億ドル)でした。これは、ブルームバーグが調査したアナリストの予測平均値である53億9000万ユーロを大きく下回る結果です。半導体業界の需要低迷が、同社の高度な半導体製造装置の需要を抑制していることが影響しています。
アナリストたちは、特に次世代技術である極紫外線(EUV)露光装置の需要低迷が原因であると指摘しています。同社は、高度な半導体製造に不可欠なEUV装置の主要供給者であり、その需要は半導体産業全体の成長と密接に関連しています。
株価急落、26年ぶりの大幅下落
ASMLの株価は、この発表を受けて16%急落し、668.10ユーロで取引を終了しました。これは1998年6月12日以来の大幅な下落幅であり、一時的に取引が中断されるほどの影響を与えました。
ASMLの最高経営責任者(CEO)であるクリストフ・フーケ氏は、「回復は当初予想していたよりも緩やかになると考えています。この傾向は2025年まで続く見込みであり、顧客の慎重な姿勢が表れています」と声明を発表しました。
さらに、同社は10月16日に予定していた決算発表を誤って前倒しで公開してしまいました。この早期の発表は市場にさらなる混乱を招きましたが、関係者は近く正式な説明を行うとしています。
2025年の業績見通しを下方修正
ASMLは、2025年の総売上高の予測をこれまでの300億ユーロ〜350億ユーロの範囲の下限に引き下げました。加えて、来年の粗利益率は51%〜53%の間になると見込まれています。この見通しは、EUV技術の需要のタイミング遅れが主な要因であり、当初予測していた範囲を下回るものです。
ASML株のパフォーマンスと中国市場の影響
ASMLの株価は2023年7月に過去最高値を記録して以来、3分の1ほど下落しています。これは、中国での事業に対する米国の規制強化の可能性や、世界的な半導体市場の低迷が影響していると見られます。
オランダ政府は、ASMLの一部の旧式機械に関して、新たな輸出管理規則を発表し、今後は米国ではなくオランダで輸出ライセンスを申請する必要があります。この発表は、オランダ政府がASMLの中国における半導体装置の修理・メンテナンス能力の一部を制限する可能性が報じられた直後の出来事です。
中国市場の重要性と今後の課題
中国は依然としてASMLにとって最大の市場であり、第3四半期には売上高の47%を占めました。しかし、米国の規制やオランダ政府の新たな輸出規制により、中国向けの事業に不確実性が高まっています。
ASMLは半導体製造装置業界におけるリーダーとしての地位を維持していますが、地政学的リスクや業界全体の景気低迷に対応するため、慎重な対応が求められています。
*過去記事はこちら ASMLホールディング(ASML)