データセンターは、現代のAI開発に不可欠なインフラであり、その中にはエヌビディア(NVDA)が提供するGPU(グラフィック処理ユニット)などの高度なチップセットが搭載されています。これらのGPUは、AIを駆動するために大量のデータ処理を行い、データセンター全体の消費電力を押し上げています。しかし、データセンターの欠点として挙げられるのは、膨大な電力消費と、それに伴う高熱の発生です。これに対応するため、従来のデータセンターには空調設備や発電機、ファンなどが設置されていますが、長期的なエネルギー効率には疑問が残ります。
そのような背景の中、データセンターのエネルギー消費問題を解決するための新しいアプローチとして原子力発電が注目を集めています。
原子力発電の可能性とマイクロソフトの新たな動き
約2週間前、マイクロソフト(MSFT)はコンステレーション・エナジー(CEG)と提携し、ペンシルベニア州のスリーマイル島にある原子力発電所の再稼働を目指す契約を発表しました。このニュースを受け、コンステレーション・エナジーの株価は急上昇しました。これにより、多くの投資家は、AIと原子力発電が交差する新たな投資機会を模索しています。
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このような状況の中で注目を集めているのが、原子力発電に特化した企業であるオクロ(OKLO)です。
オクロとは?
オクロは、「核分裂技術と核燃料リサイクルに特化した企業」です。同社の主力プロジェクトであるオーロラ発電所は、リサイクルされた核廃棄物を活用する核分裂炉であり、従来の電力網への依存を減らし、データセンターのエネルギー効率を劇的に改善する可能性があります。もし実現すれば、この技術はAIの進展を支えるインフラとして、データセンター運用に革命をもたらすかもしれません。
オクロへの著名な投資家たち
オクロは株式公開前に、いくつかの有名なベンチャーキャピタル企業から出資を受けています。投資家の中には、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏や、シリコンバレーの著名な起業家であるピーター・ティール氏も含まれています。さらに、ダイヤモンドバック・エナジー(FANG)やエクイニクス(EQIX)、セントラス・エナジー(LEU)、米国空軍などの大手企業や組織も、オクロの技術に関心を示しています。
オクロ株への注意点
オクロは2024年5月に、特別目的買収会社(SPAC)との合併を経て、ニューヨーク証券取引所に上場しました。しかし、SPACの上場手法には注意が必要です。SPACは、従来の投資銀行による引受プロセスを省略することで、迅速な株式公開が可能ですが、長期的な成果が不透明なケースも多いのです。
特に、再生可能エネルギー関連のSPAC企業のパフォーマンスに関するフロリダ大学の研究では、2009年から2024年にかけての平均リターンがマイナス84%となっていることが報告されています。これは、投資家が熱狂的な期待を抱く一方で、実際の成果が追いつかない場合に、株価が下落する傾向があるためです。
オクロのリスクと将来性
オクロの技術自体は革新的ですが、最初のオーロラ発電所が稼働するのは早くて2027年とされています。それまでは同社は収益を生み出さない状態が続き、設備投資に多額の費用を投じることになります。その結果、流動性の確保が難しくなり、株主にとっては持分の希薄化というリスクが伴います。
このため、オクロは非常にリスクの高い投資対象であり、現時点では投機的な要素が強いと言えます。
オクロを見守りつつ、大手企業に注目
オクロの原子力発電技術には大きな可能性がありますが、同社が大きな成果を出すまでにはまだ時間がかかります。投資家としては、オクロの進展を注視しつつ、現在すでにAIと原子力発電の分野で進展を見せている大手企業への投資を検討するのが賢明と言えそうです。
マイクロソフトやコンステレーション・エナジーに加え、アマゾン(AMZN)やビストラ(VST)も注目に値する企業です。これらの企業は既に確立されたビジネスモデルを持ち、原子力発電を含む持続可能なエネルギーソリューションへの投資を進めています。
まとめ: 慎重なアプローチを
オクロの技術革新はデータセンターの未来に大きな影響を与える可能性がありますが、現時点ではリスクが高い投資対象です。投資家は、オクロの技術が実現するまでの長期的な視点を持ちつつ、現時点で安定した成果を挙げている大手企業にも目を向ける姿勢が必要です。
投資の世界では、リスクとリターンのバランスを常に意識することが成功への鍵です。オクロの成長を見守りながら、堅実な投資戦略を取ることが重要です。