9月18日、連邦公開市場委員会(FOMC)はフェデラル・ファンド金利を0.5%引き下げ、緩和サイクルに入りました。また、欧州中央銀行もインフレの鈍化を受けて金利を引き下げ、中国も苦境に立たされた経済を再び活性化させるために刺激策を導入しました。これらの動きは、多くの投資家にとって予想外でしたが、これを機にポートフォリオの再検討をするべきタイミングが訪れたと言えそうです。
中国経済刺激策の影響と好調なテック株
特に注目すべきは、中国が金属や鉱業関連株に恩恵をもたらすという見方が広がっていることです。例えば、マテリアル・セレクト・セクターSPDR(XLB)はこの1週間で3.4%上昇し、投資家は中国の気前の良い政策がこれらの株にポジティブな影響を与えると期待しています。
一方、ナスダック総合指数はS&P 500種指数を上回り、さらにS&P 500種指数はダウ工業株30種平均を上回るという状況が続いています。テクノロジーと消費裁量のセクターが引き続き好調で、特にアップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)、エヌビディア(NVDA)、アマゾン・ドット・コム(AMZN)、テスラ(TSLA)といった大手テクノロジー企業は先週も堅調なパフォーマンスを示しました。ラウンドヒル・マグニフィセント・セブンETFは先週1.7%上昇し、過去3ヶ月では約12%のリターンを記録しています。
市場効率の変化と投資家の選択
市場の非効率性が増しているとの指摘もあります。AQRキャピタル・マネジメントのクリフォード・アスネス氏は、株価純資産倍率の変動から市場の変化を説明しています。特に、近年では投資家が株価の評価を合理的に行わなくなった兆候が見られるという主張です。この背景には、インデックス運用の普及、低金利時代の長期化、そして個人投資家が新しいテクノロジーを活用して合理的な評価を超えた銘柄に投資することが可能になったことが挙げられます。
アスネス氏の提案は「バリュー株」への投資ですが、現状ではリスクが高い選択肢です。DataTrekのニコラス・コラス氏もこの意見に同意しつつも、現実的な市場での取引が必要だと強調しています。
バリュー株投資の難しさと戦略
バリュー株投資は、単純にiShares Russell 1000 Value ETFを購入することで実現できますが、過去10年間の年間リターンは8.9%と、iShares Russell 1000 Growth ETFの16%には遠く及びません。また、バリュー株の定義自体が曖昧になりつつあります。Trivariate Researchのアダム・パーカー氏によると、市場のメガ株や大型株のうち、バリューと見なされる銘柄はわずか65銘柄しかありません。これは、多様性のあるバリュー株ポートフォリオの構築が難しいことを示唆しています。
さらに、金融セクターに分類されるバリュー株もわずかで、JPモルガン・チェース(JPM)やバンク・オブ・アメリカ(BAC)、ゴールドマン・サックス・グループ(GS)といった大手金融機関はバリューではなく「どちらでもない」グループに含まれる状況です。投資家は、フリーキャッシュフロー利回りの高い銘柄に注目することで、バリュー株投資の恩恵を享受できる可能性があります。具体的には、フィリップ・モリス・インターナショナル(PM)、ベライゾン・コミュニケーションズ(VZ)、AT&T(T)、そしてウォーレン・バフェットが支持するチャブ(CB)などが考えられます。
S&P 500の動向と今後の見通し
S&P 500は引き続き順調に推移しており、特にこの10年間の半ばまで今の勢いが続く可能性があります。SentimenTraderの上級研究アナリスト、ジェイ・ケイペル氏は、現在の市場が10年間単位の歴史の中で最も好調な時期の1つに入っていると指摘しています。過去のデータによれば、特に10年周期での市場のリターンは非常に高い傾向にあり、1920年代や1970年代のようにS&P 500が大きく上昇した時期がありました。
ケイペル氏は、強気相場を信じるべきである一方で、マーケットにおいて何も保証されていないことも忘れてはならないと警告しています。
まとめ
現在の市場環境では、大手テクノロジー株が引き続き強いパフォーマンスを示している一方で、バリュー株投資はリスクを伴うものの、長期的な利益を狙う投資家にとっては魅力的な選択肢となりそうです。中国の景気刺激策や金利の動向など、世界経済の変動要因を考慮しながら、戦略的なポートフォリオの見直しを行うことが重要です。