マイクロソフト(MSFT)の株価は、過去12か月で37%の上昇を記録しました。その背景には、同社が生成AI分野において先駆者的な役割を果たしてきたことが大きく影響しています。OpenAIへの多額の投資を通じ、マイクロソフトはクラウドプラットフォーム「Azure」でAI機能を強化し、AI技術においてリードを維持してきました。
しかしながら、最近の競争激化により、何人かの市場関係者はマイクロソフトの評価に再考を促しています。D.A. ダビッドソンのアナリスト、ギル・ルリア氏は、マイクロソフトがAI分野において引き続き重要な企業であると認識しながらも、競合他社が追随してきた結果、マイクロソフトがこれまで享受してきたプレミアム評価の正当性が薄れつつあると指摘しています。
株価の現状と将来の展望
現在、マイクロソフトの株価は、予想される今後12ヶ月間の1株当たり利益の31.8倍で取引されています。この水準は過去5年間の平均である29.3倍を上回っており、依然として高評価が続いている状況です。しかし、ルリア氏はこの株価評価に対して慎重な姿勢を示しており、目標株価は475ドルに据え置いたものの、同社の格付けを「買い」から「中立」に引き下げました。
マイクロソフトの競争環境とAI事業の課題
マイクロソフトはAI分野でのリードを維持してきたものの、同社のクラウド事業およびコード生成事業における優位性は低下していると分析されています。特に、アマゾン・ドット・コム(AMZN)のクラウドサービス「Amazon Web Services(AWS)」は、マイクロソフトにとって強力な競合相手となっています。
さらに、ルリア氏は、マイクロソフトがエヌビディア(NVDA)のAIチップに大きく依存している点にも懸念を示しており、この依存度が同社の将来の収益に悪影響を及ぼす可能性があると指摘しています。投資家の間では、AI関連の投資額が膨大である一方、その投資回収がどれほど早く進むかに対する懸念が高まってきています。
データセンター投資と利益率の見通し
ルリア氏は、マイクロソフトのデータセンターへの資本支出が売上高の12%から21%に増加する見込みであることも指摘しています。これは、アマゾンやアルファベット(GOOGL)と比較しても高い増加率であり、エヌビディアへの依存が大きな要因となっています。この支出の増加により、マイクロソフトの営業利益率は減少する可能性が高いと見られています。
楽観的なアナリストの見解
一方で、大半のアナリストは引き続きマイクロソフトの将来に対して楽観的な見方を持っています。ファクトセットの調査によると、同社をカバーする59人中55人のアナリストが「買い」、3人が「保留」、1人が「売り」と評価しており、AI分野におけるマイクロソフトのリーダーシップに対する期待は依然として高い状況です。
トゥルイスト証券のアナリスト、ジョエル・フィッシュバイン氏は、「マイクロソフトは、エンタープライズAI競争においてリードを維持するために積極的に取り組んでおり、OpenAIとの提携によって非常に大きな恩恵を受ける可能性がある」と述べ、目標株価を430.50ドルに設定しています。
まとめ
マイクロソフトは、生成AIの分野での強力なポジションを維持し続けていますが、競争が激化する中で株価の評価には慎重な姿勢が求められるようになっています。投資家としては、今後のAI市場における同社の動向や、エヌビディアなど外部技術への依存度、さらには競合企業の動きに注視することが重要です。
*過去記事 マイクロソフト MSFT