アマゾン株の本当の価値:eコマースは実質タダ!?

アマゾン(AMZN)は、ハイテク業界で「マグニフィセント・セブン」の一つとして広く知られていますが、その評価はeコマースだけにとどまりません。アマゾンの事業にはeコマース以外にも、広告、クラウドサービス、プライム・ビデオなどがあり、これらが株価の大部分を牽引しています。このため、多くの投資家は、アマゾンのeコマース事業を事実上「タダ」で手に入れているのだとニーダムのアナリスト、ローラ・マーティン氏は主張しています。

アマゾンは「サービス会社」である

マーティン氏は、アマゾンが主に 「サービス会社」 であり、「製品会社」ではないと強調しています。クラウドコンピューティングや広告事業などの高収益事業がアマゾンの収益を大きく支えており、eコマース事業は収益性が低いため、投資家にとって実質的には無料のボーナスのように扱われていると同氏は指摘します。

アマゾンのeコマースの課題とその強み

ただ、アマゾンのeコマースには課題があります。例えば、消費者の期待に応えるために迅速な配送が求められること、そのためのコスト、そして在庫の最適な配置を決定するための需要予測などです。これらのアルゴリズムを誤ると、アマゾンはより高い配送コストを負担し、顧客は長い配送時間を経験することになります。

さらに、中国企業との競争 も無視できない課題です。超低価格を武器にしたTemuやSheinといった企業が、グローバル市場で急速に人気を集めており、アマゾンは消費者や販売者の一部を失いつつあります。

それでもなお、もしこれらの課題に対抗できる企業があるとすれば、それはアマゾンです。マーティン氏は、アマゾンの優位性を支える4つの要因を挙げています。

アマゾンが競争で優位に立ち続ける理由

  1. 適応力
    アマゾンの企業文化は常に顧客のニーズや競争の脅威に対応してシフトしています。これは、アマゾンのeコマース事業の最大の強みの一つです。例えば、ショッピファイ(SHOP)との提携によって、ショッピファイの加盟店が「Buy with Prime」オプションを提供できるようになり、アマゾンの物流システムを活用した取引が増加しました。
  2. 強力な配送ネットワーク
    アマゾンの技術力を駆使した物流システムは、競合他社が追随できないほどの迅速な配送を可能にしています。配送網と最適化されたアルゴリズムにより、アマゾンは配送コストを削減しつつ、配送時間を短縮しています。
  3. 在庫の地域化
    地域ごとの需要を予測し、潜在的な購入者の近くに商品を保管することで、配送コストと時間を削減し、長期的には利益率を向上させる仕組みを整えています。
  4. 優れたカスタマーサービス
    アマゾンのカスタマーサービスは、高い顧客満足度を誇ります。迅速な配送や「Buy with Prime」オプションなど、顧客に寄り添ったサービスがアマゾンのリピーターを増やしています。

サービス事業の重要性と生成AIの可能性

アマゾンのeコマース事業は、収益性という点で他の事業に比べてやや劣りますが、アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)や広告事業の収益性は非常に高く、特にAWSは企業の成長を牽引しています。マーティン氏は、アマゾンのサービス事業の利益率は製品販売の7倍に達すると見積もっています。

さらに、アマゾンの成長を大きく後押しする要因として、生成AI の活用が挙げられます。AIを活用した新たなサービスや技術は、今後のアマゾンの競争力を一層高めることが期待されています。

アマゾン株価の評価と今後の見通し

マーティン氏の計算では、アマゾンの広告事業は5060億ドル、AWSは6510億ドルの価値があり、サブスクリプション事業も2230億ドルと評価されています。アマゾンの時価総額が約1兆9200億ドルであることを考えると、差し引きでeコマース事業には約5400億ドルの価値があることになります。事業の規模を考えると、投資家はアマゾンのeコマース事業を安価に手に入れていると言っても過言ではありません。

アナリストたちは、アマゾン株を依然として「買い」と評価しており、2024年の目標株価を210ドル〜220ドルとしています。これは、現在の株価よりも約20%高い水準です。生成AIの成長と、サービス事業のさらなる拡大が見込まれるため、アマゾンは今後も高い成長が期待されています。

まとめ

アマゾンは、広告やクラウド事業などの高収益事業を通じて株価を押し上げ続ける一方で、eコマース事業は実質的にボーナスとして投資家に提供されています。競争環境が厳しくなる中でも、アマゾンは適応力と強力な物流ネットワークを武器に、その優位性を維持しています。生成AIの可能性も含め、アマゾンは今後も注目すべき投資先です。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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