エヌビディア(NVDA)の最高経営責任者(CEO)であるジェンスン・フアン氏は、同社の最新チップがテクノロジー業界で最も注目される製品である一方で、供給の限界により顧客の不満が高まっていることを明らかにしました。この問題は、特にAI(人工知能)に関する技術の需要が爆発的に増加していることが原因となっています。
「需要が急増、誰もが最初になりたがっている」
フアン氏は、9月11日にサンフランシスコで開催されたゴールドマン・サックス・グループのテクノロジー会議にて、エヌビディアの供給問題について次のように述べました。
需要は非常に大きく、誰もが最初になりたがり、誰もが一番でありたいと考えています。おそらく今、私たちはこれまで以上に感情的なお客様を抱えています。それも当然のことです。緊張感があります。私たちはできる限り最善を尽くそうとしています。
特に、同社の最新世代チップ「Blackwell」に対する需要が非常に高く、顧客からの注文が殺到している状況です。これにより、一部の顧客は供給不足に不満を抱いていると言います。
エヌビディアの成功を支えるAI需要
エヌビディアのチップは、特にデータセンター事業者がAIモデルを開発・実行するために使用されています。この分野では急激な需要拡大が見られ、エヌビディアの売上と株価は急上昇しています。2023年には同社の株価が239%上昇し、2024年にはさらに倍増しています。
9月11日の米国市場でエヌビディアの株価は8.1%上昇し、116.91ドルに達しました。これは過去6週間で最大の1日における上昇幅です。
しかし、同社の売上の大部分は、マイクロソフトやメタ・プラットフォームズのような少数の大手データセンター事業者に依存しているため、この点でもリスクが存在します。
AIへの投資は有効か?
フアン氏は、テクノロジー業界全体でAIへの投資が進む中、一部の顧客がその投資のリターンに不安を抱いているという指摘に対して、「アクセラレーテッド コンピューティングを受け入れることは企業にとって避けられない」と述べました。
エヌビディアの技術は、従来のデータ処理を高速化するだけでなく、従来の技術では対応できないAIタスクの処理も可能にしています。これにより、AI関連のソリューションは今後も重要な市場となることが予想されます。
供給問題とTSMCへの依存
エヌビディアの成功は、TSMCこと台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)に大きく依存しています。TSMCは、世界最高のチップ製造企業の一つであり、エヌビディアにとって非常に重要なサプライヤーです。
しかし、地政学的なリスクも無視できません。中国は台湾を自国の一部とみなし、将来的に領有権を主張する可能性が懸念されています。もし中国が台湾に対する行動を起こした場合、エヌビディアは主要なサプライヤーであるTSMCを失うリスクがあります。
フアン氏は、エヌビディアは技術の多くを自社で開発しており、他のサプライヤーに切り替える能力を持っていると述べました。しかし、そうした切り替えが製品の品質に影響を与える可能性があるとも指摘しています。
TSMCの機敏さと、当社のニーズに応える能力は、まさに驚異的です。だからこそ、私たちは彼らを利用しているのです。しかし、必要であれば、もちろんいつでも他の業者に切り替えることができます。
まとめ
エヌビディアはAI分野におけるリーダーシップを維持し続けており、今後も高い需要に支えられて成長を続けることが期待されています。しかし、供給の制約や地政学的リスクなど、解決すべき課題も存在しています。フアン氏のリーダーシップの下、エヌビディアがどのようにこれらの課題を克服していくかが今後の注目ポイントです。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA