9月6日の米国市場で、半導体大手 ブロードコム(AVGO) の株価が9%を超える下落を見せ、市場を驚かせました。しかし、ウォール街のアナリストたちは、この急落にもかかわらず、ブロードコムの長期的な将来性に対して依然として強い信頼を寄せています。この記事では、ブロードコム株が急落した理由や、今後の成長性について深掘りします。
ブロードコム株が急落した理由
ブロードコムの株価は、6日の取引開始直後に 10%下落 し、137.24ドルとなりました。この下落は、市場が期待していたAI関連売上の成長ペースが控えめに映ったためです。経営陣は、2024年度の売上予想を強気なものにはしませんでしたが、それでも AI関連の売上が120億ドル に達する見込みで、これは前回予想の110億ドルを上回っています。
それにもかかわらず、投資家たちは短期的な成長予測に対して不安を感じ、一時的に株を売却する動きが見られました。
ブロードコムの強みとAI市場における位置づけ
ブロードコムは、ネットワーク、サーバーストレージ、ブロードバンド、産業用アプリケーションなど多岐にわたる分野で半導体を提供しています。また、同社は AIに使用されるハイエンドのアプリケーション専用集積回路(ASIC) 市場でも主要なプレイヤーとなっています。
アルファベット(GOOGL)などの大手テクノロジー企業は、AIシステム向けのカスタムチップを設計する際にブロードコムの技術を活用しています。この点で、ブロードコムは エヌビディア(NVDA) に次ぐ AIチップメーカー として市場からの評価を得ています。
ウォール街アナリストの見解
ブロードコムのCEOである ホック・タン氏 は、AI関連市場において依然として「強い需要」があり、今後も成長が期待できると述べています。ウォール街のアナリストたちもこの見解に同意しており、特に ゴールドマン・サックスのアナリスト、播俊也氏は、ブロードコムのAI事業が短期的な停滞を乗り越えた後に再び加速すると予測しています。
播氏は、ブロードコムに対する買い推奨 を維持し、目標株価を185ドルから190ドル に引き上げました。また、 メリウス・リサーチのアナリスト、ベン・ライツェス氏 は、 メタ・プラットフォームズ(META)やアルファベットがAIチップへの投資を増やしていることに注目し、今後さらに多くの大口顧客をブロードコムが獲得する可能性が高いと述べています。同氏は2年後の目標株価を 205ドルとしています。
長期的な成長の見通し
ブロードコムは、2024年度に向けてAI市場での強い成長を見込んでいますが、その成長を支えるのは、AIチップだけでなく、AI以外のネットワーク、サーバーストレージ接続、ブロードバンドなどの収益源も重要な要素となっています。これらの分野での回復と相まって、ブロードコムの業績は再び好調な状態に戻ると期待されています。
ブロードコムの株価は2023年に入ってから 24%上昇しており、これは iShares Semiconductor上場投資信託(ETF)の7%上昇を大幅に上回っています。この成長は、ブロードコムがAI分野だけでなく、幅広い技術分野での収益源を持っていることに起因します。
ブロードコム株に投資するべきか?
短期的には株価の変動が続く可能性があるものの、長期的には AI市場での成長 が期待されるブロードコムは、依然として投資家にとって魅力的な銘柄であると考えられます。特に、アルファベットやメタといった大手企業との提携や、AI以外の分野での収益源もあり、幅広い事業展開をしている点が強みとなっています。
現在の株価下落を短期的な現象と捉え、長期的な視点で見ると、ブロードコム株への投資は今後も有望であると言えます。
*過去記事 ブロードコム AVGO