S&P 500種株価指数に含まれる11セクターの中で、工業株は配当利回りの観点で際立つことはあまりありません。通常、エネルギー、不動産、公益株がその役割を担っています。しかし、工業株は長い実績を持ち、投資家に多様な選択肢を提供しています。
工業株の配当利回りとその位置付け
S&Pダウ・ジョーンズ・インデックスによると、7月31日時点で、S&P 500に含まれる工業株の67銘柄が配当を提供しており、これは金融銘柄をわずかに上回る数です。工業株の平均利回りは1.6%で、S&P 500全体の平均利回りである約1.35%を上回っています。大きな利回りを期待するには適していないかもしれませんが、その安定性が投資家にとって大きな魅力となります。
工業株の配当成長の魅力
工業株は景気低迷の影響を受けやすい一方で、キャッシュフローが潤沢な老舗企業が多く存在し、長期的な配当成長が期待できます。T.ロウ・プライス・グローバル・インダストリアル・ファンドのジェイソン・アダムズ氏によると、多くの工業企業は毎年着実に配当を増やしており、これは長期投資家にとって大きなメリットです。
2024年の工業株のパフォーマンスと今後の見通し
今年に入ってから、工業株は他のセクターに比べてパフォーマンスが低調でした。S&P 500の工業株は12%上昇にとどまり、市場全体の18%という上昇には及びませんでした。しかし、電化やインフラ整備、自動化の進展が工業株にプラスの影響を与えています。
たとえば、ハネウェル・インターナショナル(HON)は、配当利回り2.2%を誇り、収益に連動した配当の増加を目指しています。また、ジョンソン・コントロールズ・インターナショナル(JCI)は、データセンター業界にサービスを提供し、急成長しています。
注目すべき工業株と配当利回り
工業株の中には、特に注目すべき銘柄がいくつかあります。以下のリストは、8月19日時点のデータを基にしています。
企業名 | ティッカー | 直近株価 | 配当利回り | 年初来リターン | 時価総額 (10億ドル) |
---|---|---|---|---|---|
A.O.スミス | AOS | $80.70 | 1.6% | -1.0% | $11.9 |
キャタピラー | CAT | 344.65 | 1.6 | 18.0 | 168.7 |
C.H. ロビンソン・ワールドワイド | CHRW | 101.05 | 2.5 | 18.8 | 12.2 |
カミンズ | CMI | 301.32 | 2.4 | 27.3 | 41.8 |
エマソン・エレクトリック | EMR | 103.84 | 2.0 | 8.3 | 60.0 |
ハネウェル・インターナショナル | HON | 199.04 | 2.2 | -3.6 | 130.4 |
イリノイ・ツール・ワークス | ITW | 242.66 | 2.5 | -6.3 | 72.4 |
ジョンソン・コントロールズ・インターナショナル | JCI | 70.53 | 2.1 | 23.7 | 47.7 |
これらの企業は、配当利回りと安定性の両方を提供し、長期的なインカムゲインを求める投資家にとって魅力的な選択肢です。
工業株への投資戦略
工業株は、配当利回りが市場平均を上回ることが多く、特に長期投資において魅力的です。S&P 500 Dividend Aristocrats Indexの構成銘柄の中から選ばれる企業は、25年以上にわたって安定した配当を維持しており、不確実な経済環境でも信頼性の高い収益源となります。
配当性向の低い工業株は、将来的に配当を増加させる余地があり、これもまた投資家にとって重要な要素です。例えば、C.H.ロビンソン・ワールドワイドやイリノイ・ツール・ワークス、エマソン・エレクトリックなどの企業は、安定した配当を提供しつつ、今後の成長が期待されています。
まとめ
工業株は、配当収入を目的とした投資家にとって重要な選択肢となり得ます。大きな利回りを期待することは難しいかもしれませんが、安定した配当成長と企業の堅実な経営が、長期的なリターンを支えるでしょう。これらの特性を活かし、バランスの取れたポートフォリオを構築することが、投資家にとって重要です。
*過去記事はこちら 配当株