近年、人工知能(AI)への期待が高まり、多くの投資家がテクノロジー大手に資金を集中させています。特に「マグニフィセント・セブン」と呼ばれるアルファベット(GOOGL)、アマゾン(AMZN)、エヌビディア(NVDA)、ネットフリックス(NFLX)、テスラ(TSLA)、アップル(AAPL)、マイクロソフト(MSFT)の7銘柄に注目が集まっています。これらの銘柄に投資するETF「ラウンドヒル・マグニフィセント・セブン」に10万ドルを投資した投資家は、過去1年間で約5万5000ドルの利益を得たと言われています。
一方で、バンク・オブ・アメリカ・グローバル・リサーチのストラテジストたちは、AIブームがピークに達しつつあると指摘。今後は、全天候型の投資戦略が重要であると主張しています。本記事では、バンク・オブ・アメリカが推奨する新たな投資戦略について詳しく解説します。
バンク・オブ・アメリカの主張: AI投資の限界
バンク・オブ・アメリカのジャレッド・ウッドワード氏によれば、AIへの過剰な期待がピークに達し、今後は実体経済部門が追い上げる時期に入るとしています。過去10年間でS&P 500の時価総額の増加分の約48%は、2020年に指数に組み入れられたテスラ(TSLA)を除いた「マグニフィセント・セブン」の銘柄によるものでした。2024年には、この割合が52.5%に達すると予想されています。
しかし、AI関連企業においても、データセンターや関連ハードウェアなどにかかるコストが増加しているため、今後の収益成長には疑問が残ります。例えば、アルファベット(GOOGL)は直近の四半期で支出をほぼ倍増させ、メタ・プラットフォームズ(META)も今年の予測を上方修正しました。
全天候型投資へのシフト
バンク・オブ・アメリカは、今後の1年間でAI ETFの収益成長への期待が低下し、S&P 500の他の銘柄に恩恵がもたらされる可能性があると予測しています。彼らは、S&P 500を上回るパフォーマンスを記録した銘柄群をスクリーニングし、以下のセクターに注目しています。
消費裁量セクター
- オライリー・オートモーティブ(ORLY): 自動車部品の販売を手掛けるアメリカの大手小売チェーンです。特にアフターマーケット用の自動車部品で高いシェアを持っています。
- NVR(NVR): アメリカで有名な住宅建設会社で、住宅の設計、建設、販売を行っています。効率的な事業運営に定評があります。
金融セクター
- プログレッシブ(PGR): 主に自動車保険を提供するアメリカの保険会社で、近年はデジタル化を進め、オンライン保険販売で大きなシェアを持っています。
- KKR(KKR): 世界的なプライベート・エクイティ投資会社で、買収・再編・投資など幅広いファイナンス事業を展開しています。
- アーチ・キャピタル・グループ(ACGL): 保険・再保険事業をグローバルに展開する企業で、特に専門性の高い保険商品を提供しています。
生活必需品セクター
- コストコ・ホールセール(COST): 世界的に展開している会員制倉庫型小売業者で、消費者に低価格で大量の商品を提供しています。
ヘルスケアセクター
- バーテックス・ファーマシューティカルズ(VRTX): 遺伝性疾患の治療薬を開発するバイオテクノロジー企業で、特に嚢胞性線維症(CF)治療薬で有名です。
- HCAヘルスケア(HCA): アメリカ最大の医療サービスプロバイダーの一つで、全国に病院やクリニックを展開し、質の高い医療サービスを提供しています。
テクノロジーセクター
- アナログ・デバイセズ(ADI): 高性能アナログ半導体の設計・製造を行う企業で、産業機器や通信機器に使用される製品を提供しています。
- アンフェノール(APH): コネクタ、センサー、ケーブルなどの電子部品を提供する企業で、航空宇宙や自動車産業向けの製品が主力です。
素材セクター
- バルカン・マテリアルズ(VMC): アメリカ最大の建設用骨材(砂、砂利、砕石など)を供給する企業で、インフラ整備に不可欠な素材を提供しています。
工業セクター
- イートン(ETN): 電力管理ソリューションを提供する企業で、産業用の電力供給システムや航空宇宙用の部品を手掛けています。
- シンタス(CTAS): ユニフォームの供給や施設管理サービスを提供する企業で、特に企業向けのユニフォームレンタルが主要事業です。
- パーカー・ハネフィン(PH): モーション・コントロール技術のリーディングカンパニーで、産業機械や航空機に使用される油圧・空圧機器を製造しています。
バンク・オブ・アメリカは、テクノロジーセクターを「アンダーウェイト」とし、生活必需品やヘルスケアセクターも同様に「アンダーウェイト」としていますが、上記の銘柄を特に推奨しています。
まとめ: 幅広い分散投資が鍵
米国株式市場は今年に入ってからも好調に推移しており、S&P 500は不況による影響を受けつつも、2桁の利益で終わる見通しです。バンク・オブ・アメリカの推奨する戦略は、特定の銘柄やセクターに過度に依存するのではなく、バランスの取れたポートフォリオを維持することです。これは、個別銘柄の選択に伴うリスクを軽減し、長期的なパフォーマンスを向上させるための鍵となります。