高性能なAIチップの登場により、膨大な電力消費が問題となり、その解決策としてエヌビディア(NVDA)の液体冷却技術が注目を集めていることは、「エヌビディアの液冷技術がデータセンターの電力消費を削減」でご紹介したとおりです。このAIサーバーラックに直接液体冷却(DLC)を導入することについてはサーバーメーカーも独自の取り組みを進めています。
DLCの導入と市場の急成長
液冷データセンターは、今年初めには市場のわずか1%に過ぎませんでした。しかし、この状況は急速に変わりつつあります。エネルギー効率の高い技術をリードしてきたスーパー・マイクロ・コンピュータ(SMCI)が、この変革を牽引しています。同社は、液冷ラックの導入に成功し、業界のリーダーとしての地位を確立しつつあります。
スーパーマイクロの戦略と市場シェア
スーパーマイクロは、大規模な液冷ラックの導入において独自のアプローチを採用しています。前四半期の売上総利益率の低下は一時的なものであり、液冷コンポーネントの迅速な出荷によるコスト増加が原因です。しかし、このコスト増加は、予想を上回る需要によるものであり、長期的には好材料と見なされています。
同社は、6月と7月に約1,000台の液冷ラックを出荷しました。スーパーマイクロのCEO、チャールズ・リャン氏は、今後12ヶ月間に新規導入されるデータセンターの25%〜30%がDLCソリューションを採用すると予測しています。
市場の常識を覆すDLCの成長
DLCが1年で市場シェアを1%から30%に伸ばす可能性があることは、エンタープライズサーバー業界において革命的です。スーパーマイクロは、低価格で大量生産する戦略を採用し、市場シェアの拡大を狙っています。これにより、AIサーバーの導入コストを抑え、企業の支出を増やす効果が期待されます。
新技術と今後の展望
スーパーマイクロは今年後半に新しいデータセンター・ビルディング・ブロック・ソリューション(DCBBS)を展開予定です。これにより、同社はハードウェア部品プロバイダーからエンドツーエンドのデータセンター構築を提供する企業へと進化します。さらに、マレーシアの新製造工場の稼働により、コストが劇的に下がる見込みです。
まとめ
スーパーマイクロは、AIデータセンター向けの直接液体冷却で市場をリードするための多額の投資を行っています。この戦略は、企業にとって長期的に有利であり、エネルギー効率の向上とコスト削減を実現します。AI時代におけるデータセンターの未来は、スーパーマイクロの革新的な技術にかかっていると言えます。
*過去記事はこちら スーパー・マイクロ・コンピュータ SMCI