米首都ワシントンの連邦地裁が8月5日、グーグルのインターネット検索に対する独占的地位を認めた判決を下しましたが、これが画期的な反トラスト法違反の判決として注目されています。法的には大きな前進とされていますが、この判決がインターネット検索市場やグーグルの収益にどのような影響を及ぼすのかはまだ明確ではありません。過去の反トラスト法違反事件を振り返ると、マイクロソフトやグーグルに対する判決がインターネット業界に目立った変化をもたらさなかったことが多いのです。
ヨーロッパでの事例:市場シェアは変わらない
数年前、ヨーロッパの反トラスト法規制当局は、グーグルの親会社であるアルファベットに対して、アンドロイド携帯のユーザーに検索エンジンの選択肢を提供するよう強制しました。しかし、スタンフォード大学ロースクールのオマール・バスケス・ドゥケ教授は「グーグルの市場シェアはまったく変わらなかった」と指摘しています。多くのユーザーは依然としてグーグルを選び続けています。
投資家の視点:グーグルへの影響は限定的
投資家たちも、今回の判決がグーグルに大きな打撃を与えるとは考えていないようです。アルファベット(GOOGL)の株価はS&P500種株価指数を少し上回る程度であり、判決後の株価も大きな変動はありませんでした。一方で、アップル(AAPL)は大きな影響を受ける可能性があります。グーグルがアップルのiPhoneやその他のプラットフォームでデフォルトの検索プロバイダーとなる契約が違法とされたことで、グーグルから年間200億ドルにものぼる収入を得ていたアップルの収益構造に変化が生じるかもしれません。
過去の反トラスト法裁判の教訓
過去の反トラスト法裁判を振り返ると、インターネット業界に大きな変化をもたらした例は多くありません。2000年のマイクロソフトの解体命令が控訴審で覆された例や、2001年の和解によりネットスケープ・コミュニケーションズが自社の検索エンジンをウィンドウズPCに搭載することが可能になった例などがあります。しかし、これらの措置も結局グーグルの優れた製品には太刀打ちできませんでした。
今後の展望:救済措置と独占禁止法裁判の行方
今回の判決を下したメータ判事は、グーグルの独占に対する救済策について別の裁判を行う予定です。しかし、過去の事例から見ても、独占禁止法上の救済措置が効果的であったことは少ないです。グーグルの市場シェアを本当に奪うには、ライバル企業がもっと優れた検索エンジンを開発する必要があるとバスケス・ドゥケ教授は考えています。
現在、Perplexityのような人工知能ベースのスタートアップ企業がその挑戦に取り組んでいますが、実現にはまだ時間がかかりそうです。一方、救済措置の裁判と独占禁止法裁判の控訴には何年もかかると予想されています。
今後の動向に注目
今回の判決は画期的なものであり、今後の動向に注目が集まります。しかし、インターネット検索市場やグーグルの収益にどのような影響を及ぼすのかはまだ明確ではありません。引き続き、裁判の進展と市場の反応を注視していく必要があります。
*過去記事 アルファベット GOOGL