TSMCで知られる台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)は7月18日、第2四半期の利益が前年同期比36%増加したと発表しました。世界最大の受託チップ・メーカーであるTSMCは、6月までの3ヶ月間で純利益が2478億5000万台湾ドル(76億1000万米ドル)に達しました。これはファクトセット調べのアナリスト予想を上回る結果となりました。
売上高と営業利益の成長
第2四半期の売上高は前年同期比40%増の6735億1000万台湾ドルとなり、6月の売上高は33%増加しました。営業利益率も42.5%に達し、前年同期から0.5ポイント上昇しました。
TSMCの成長を牽引したのは、AIチップを含むハイパフォーマンス・コンピューティング部門の売上増加です。前四半期から約28%の増加を記録しました。一方で、スマートフォンからの売上は1%減少し、インターネット・オブ・シングス(IoT)部門からの売上は6%増加しました。
株価の上昇と市場評価
TSMCはエヌビディア(NVDA)やアップル(AAPL)を顧客に持ち、世界の最先端チップの約90%を生産しています。この実績を背景に、投資家たちはAIの需要が続くと見込み、TSMCの株価を史上最高値まで押し上げました。今年に入ってから、TSMCの台湾上場株は約70%上昇し、ベンチマークのTaiexの30%上昇を大きく上回っています。
先週、同社の米国預託証券(ADR)は記録的な上昇を見せ、同社の市場価値は一時1兆米ドルを超えました。
第3四半期の見通しと地政学的懸念
TSMCは第3四半期の売上高を224億〜232億米ドル、営業利益率を42.5%〜44.5%と予想しています。しかし、地政学的な懸念がTSMCと半導体業界全体に影を落としています。
米大統領候補ドナルド・トランプ氏の発言が、TSMCの株価に影響を与えました。同氏は台湾のチップの生産優位性に言及し、台湾は米国に防衛費を支払うべきだと述べました。この発言を受け、TSMCの株価はウォール街で圧力を受けました。
さらに、中国の侵攻という潜在的な脅威と、地政学的な優先事項としてのチップ製造問題の台頭が、チップ製造を地理的に分散させる動きを加速させています。TSMCはアリゾナ州の3工場を含む海外での新工場建設に数十億ドルを投資しています。
米国の新たな規制と株価への影響
バイデン政権が中国で事業展開するチップ企業に対する新たな規制を検討しているとの報道も、TSMC株に影響を与えました。この報道を受け、7月17日の米国市場でTSMのADRは8.0%下落し、1日の下落率としては過去4年間で最大となりました。
7月18日午前4時過ぎの米国市場のプレマーケットではTSMCは3.7%高、エヌビディアは2.7%高で取引されています。
まとめ
TSMCは第2四半期において強力な財務結果を発表しましたが、地政学的な懸念と新たな規制の影響が懸念材料となっています。同社の将来の成長と安定性に注目が集まる中、投資家は慎重に動向を見守る必要があります。