ASMLホールディング(ASML)は、半導体製造装置の分野で世界をリードする企業ですが、7月17日の第2四半期決算発表の後、アムステルダム市場で株価が8%下落しました。これは明るい受注見通しにも関わらず、中国への輸出がさらに抑制されるとの懸念が影響したと見られます。
ASMLの重要な役割
ASMLは、半導体製造に不可欠な露光装置を供給しており、その顧客には台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSM)サムスン電子、インテル(INTC)などの大手企業が含まれます。ASMLの技術は、最先端の半導体チップ製造において欠かせない存在です。
受注額の増加と市場の反応
2024年6月末までの3ヵ月間のASMLの受注額は55億7000万ユーロ(60億7000万ドル)に達し、前年同期の45億ユーロから増加しました。ビジブル・アルファのコンセンサス予想では、アナリストは50億4000万ユーロの受注を予想していましたが、それを上回る結果となりました。
第1四半期の受注が予想を下回り、株価の急落を招いた後だけに、この結果は安心材料となるはずでした。しかし、17日の株価の反応はおそらく決算報告とは無関係であり、中国とのチップ戦争の進展が影を落としているようです。
米中貿易摩擦の影響
ブルームバーグの報道によると、バイデン政権は、ASMLのような企業が中国にチップ製造機械を販売し続けた場合、中国への輸出に最も厳しい貿易制限を適用することを検討していると同盟国に伝えたとのことです。ASMLはこの報道についてコメントを控えていますが、オランダでの株価は取引開始早々に4.9%下落しました。
EUVシステムと中国市場
ASMLの最先端システムである極端紫外線(EUV)露光装置の予約は、第2四半期に25億ユーロに達しました。このEUVシステムは製造に18ヶ月かかり、中国への販売は禁止されています。しかし、第2四半期の売上高の49%は中国市場からのものであり、中国は唯一最大の売上地域となっています。
2024年の見通し
ASMLのクリストフ・フーケ最高経営責任者(CEO)は、2024年の通年見通しは変わらず、生産能力増強とテクノロジーの両面で継続的な投資を行うと述べています。フーケCEOは、特にAIの力強い発展が業界の回復と成長を牽引すると予想しています。
財務状況と今後の予測
ASMLの第2四半期の純利益は15億8000万ユーロで、前年の19億4000万ユーロから減少しましたが、売上高は69億ユーロから62億4000万ユーロに減少しました。しかし、これらの数値はアナリストの予想を上回っています。第3四半期の売上高は67億ユーロ〜73億ユーロ、売上総利益率は50%〜51%と予想されています。
ASMLの株価動向や今後の展望に注目しつつ、投資家としての戦略を練ることが重要です。ASMLの技術と市場における地位は揺るぎないものですが、米中貿易摩擦の影響を見極める必要があります。
まとめ
ASMLホールディングは半導体製造装置市場でのリーダーシップを維持しつつ、中国市場への依存度と米中貿易摩擦の影響を慎重に管理する必要があります。投資家は、ASMLの技術革新と市場動向を注視し、今後の展開を見守ることが求められます。