エヌビディア（NVDA）は、その革新的なグラフィック・プロセッシング・ユニット（GPU）と、開発者が並列コンピューティングをプログラムするためのソフトウェア定義キットCUDAを通じて、人工知能（AI）チップ市場の完全なリーダーとしての地位を確立してきました。2006年のCUDAの開発以来、エヌビディアはこの分野で圧倒的な存在感を示し、開発者や企業が大規模な投資を行うことで、見事なネットワーク効果を生み出しました。
しかし、市場の独占は永遠に続くわけではありません。エヌビディアのAI半導体に対する挑戦が、ユニファイド・アクセラレーション・ファウンデーション（UXL）という形で現れています。この新たなオープンソース・コンソーシアムは、世界最大級のAI半導体ソフトウェア企業8社で構成され、エヌビディアの技術的な”堀”を乗り越え、業界全体の革新を目指しています。
UXLコンソーシアムの目的とは？
UXLは、技術的にはインテル（INTC）が主導していますが、その他にもアルファベット（GOOGL）、サムスン、クアルコム（QCOM）、ブロードコム（AVGO ）傘下のVMware、アーム・ホールディングス（ARM）、富士通（FJTSY）、非上場のチップ・ライセンス会社イマジネーション・テクノロジーズなど、多くの大企業が運営メンバーとして名を連ねています。このグループは、エヌビディアを含むあらゆるタイプのAI半導体セットで動作するオープンソースソフトウェアの開発に集中しており、市場の独占状態を打破し、より民主的なアクセスを提供することを目指しています。
UXLがもたらす可能性
エヌビディアは過去数四半期にわたって58％という驚異的な調整後純利益率を達成していますが、UXLの取り組みは、AI半導体市場に新たな選択肢をもたらし、価格を引き下げることで、業界全体の競争を促進する可能性があります。2025年までにCUDAに代わる技術を市場に投入することを目指しており、特にインテルが2018年に発表したOneAPIプロジェクトを通じて、この野心的な目標を実現しようとしています。
エヌビディアへの影響は？
UXLの成功は、エヌビディアの市場支配に疑問を投げかけることになりますが、エヌビディアがその技術的な優位性を完全に失うわけではありません。約400万人の開発者が15年ほど前からエヌビディアのCUDAを中心にアプリケーションを構築しています。そして、エヌビディアは依然としてソフトウェアの上に、市場で最高のAIハードウェアエンジンを搭載しています。それでも、UXLの取り組みは、より多様なソフトウェア環境を促進することで、市場の健全な競争を促すことになります。
この新たな競争の構図は、AI技術の将来に影響を与える可能性があります。UCLがエヌビディアの技術的な”堀”を乗り越えることができるかどうか、そしてそれがAI半導体市場に新たなイノベーションの波をもたらすかどうか、引き続き見守る必要があります。
＊過去記事はこちら エヌビディアNVDA