クリエイティブ・ソフトウェア業界のリーダーであるアドビ(ADBE)は3月14日、2024年2月期の決算を発表しました。同社は51億8000万ドルの売上高を達成し、ウォール街の予想をわずかに上回る結果を示しました。また、調整後の利益は1株当たり4.48ドルで、予想の1株当たり4.38ドルを超える好結果を出しました。デジタルメディア部門とデジタルエクスペリエンス部門の売上高も予想を上回る成績を収めました。
生成AIの活用とイノベーション
アドビは生成AIのトレンドをビジネスに積極的に取り入れています。CEOのシャンタヌ・ナライエン氏は、「当社は製品ポートフォリオ全体に画期的なイノベーションを提供するために生成AIの力を活用してきた」と述べています。この戦略は、新規デジタルメディアの年換算売上高がガイダンスを上回るなど、一定の成果を上げています。
見通しの課題と自社株買い戻しプログラム
しかし、5月四半期のガイダンスではほぼすべての指標でウォール街の予想を下回り、特に新規デジタルメディア純収入の予想が市場の期待を大きく下回っています。
売上高の見込みは52億5000万ドル〜53億ドルで、アナリストのコンセンサス予想の53億1000万ドルを下回っています。デジタルメディア部門の売上高の見込み38.7億ドル〜39億ドルに対してコンセンサス予想は39億ドル。デジタルエクスペリエンス部門については、13.1億ドル〜13.3億ドルの売上を見込んでおり、中間値でコンセンサス予想の13.3億ドルを少し下回っています。最大の問題は、新規デジタルメディア純収入の見込みで、4億4,000万ドルとコンセンサス予想の4億6,980万ドルを大きく下回っています。調整後利益の見込みは1株当たり4.35ドル〜4.40ドルで、中間値で、コンセンサス予想の1株当たり4.38ドルとほぼ一致しています。
このような見通しは、決算発表後の時間外取引でアドビ株が10%以上下落する原因となりました。一方で、アドビは新たに250億ドルの自社株買い戻しプログラムを発表し、投資家への信頼を示す試みを行っています。
投資家の見方:慎重な姿勢
AI特化ソフトウェア企業が成長を続けていることは、アドビのポジショニングに影響を与え続けています。OpenAIの「Sora」のようなテキストからビデオへの変換ソフトウェアの開発は、市場の動向を左右する可能性があります。投資家は、このような技術進化を注視し、アドビの戦略と成長見通しに対して慎重な姿勢を取っています。
まとめ
アドビの最新の決算報告は、堅調な業績を背景にしつつも、見通しの不透明さを浮き彫りにしました。生成AIの活用によるイノベーションは注目に値しますが、市場の変化への迅速な対応と、投資家の期待に応える戦略の継続が求められます。アドビ株への投資を検討するにあたっては、これらの要因を慎重に評価する必要があります。