人工知能(AI)の発展により、マイクロソフト(MSFT)を含む多くの企業がこの技術を活用しています。S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスは、2023年に39億ドルだったAIソフトウェア市場が、年複利ベースで58%成長し、2028年には390億ドルに達すると予測しています。
主要な企業としてのマイクロソフト
マイクロソフトは、特にAI分野で、他の企業と比べてユニークな資産を持っています。例えば、クラウドコンピューティングサービス「Azure」は、Google CloudやAmazon Web Servicesよりも急速に成長しており、おり、AIワークロードを実行するためにクラウド容量を購入する必要がある他のエンタープライズ・ソフトウェア企業よりもコスト面で優位に立っています。
9月期において、マイクロソフトはAzureの29%の売上増加のうち3%をAIプロジェクトによるものだとしています。マッコーリーのアナリストFrederick Havemeyer氏は、AzureのAI関連売上は同四半期に3億8800万ドルに上ったと推定。年換算で、マイクロソフトはすでにAIの売上が20億ドルを突破していると見ています。
OpenAIとの関係
マイクロソフトはOpenAIに130億ドルを投資し、49%の株式を保有しています。この関係により、マイクロソフトはOpenAIのGPT大言語モデルや関連ソフトウェアにアクセスできるようになりました。
サム・アルトマン最高経営責任者(CEO)が一時解雇された騒動は話題となりましたが、その結果、両社の関係は以前よりも近づき、マイクロソフトはOpenAIの再建された取締役会のオブザーバーの地位を与えられました。
Microsoft 365の利点
マイクロソフトには、他社が追随できないもうひとつの資産があります。それは、生産性スイート「Office」、オペレーティング・システム「Windows」、コミュニケーション・スイート「Teams」のおかげで、すでに何億人もの知識労働者の日常生活に不可欠な役割を果たしていることです。また同社はGitHub部門を通じて、ソフトウェア開発者にとっても同様に不可欠な役割を果たしてもいます。
OfficeとGitHubを組み合わせることで、マイクロソフトは、広く使われているアプリケーションの上にAIツールを追加する「Copilot」ソフトウェアの新興スイートに容易にアクセスできる市場を提供しています。生産性向上とソフトウェア開発の両分野で、Copilotは顧客に大幅な時間短縮の可能性を提供します。
投資家が最も興味をそそられているCopilotは、Word、Excel、PowerPoint、Teamsを含む生産性スイートであるMicrosoft 365の上で動作します。11月に法人向けに365 Copilotを発表した際、マイクロソフトは1ユーザーあたり月額30ドルという野心的な価格を設定しました。一部の試算では、これは大企業ユーザーが現在365のクラシックバージョンに支払っている金額の2倍、あるいは3倍になるものです。
マイクロソフトのコーポレートバイスプレジデント、ジャレッド・スパタロ氏は、「最も重要なことにもっと時間を使えるようになる」と述べ、顧客が365 Copilotにお金を払うことには、説得力のある理由があると考えています。同氏によると、最近のテストでは、Copilotユーザーは従来の365ユーザーと比較して、一連のOfficeタスクで29%高速に処理できたということです。
アナリストの評価
バーンスタインのアナリストであるMark Moerdler氏は、Microsoft 365 Copilotは1シート30ドルの価格で50%の粗利益を生み出せると考えています。
「マイクロソフトがCopilotを実行するコストは、OpenAIのベンダーモデルを使って同じアプリケーションを実行する他社よりもはるかに低い。月額30ドルという価格は、マイクロソフトにとっては大きな利益を生むが、他の企業にとってはほとんど利益にならないかもしれない」と、同氏は最近のリサーチノートに書いています。
コロンビア・スレッドニードル・インベストメンツのセリグマン・テクノロジー・チームのポートフォリオ・アナリスト、イスラエル・ヘルナンデス氏によると、同社はマイクロソフト株を「ずっと」保有していますが、AIのビジネスチャンスに熱狂しているため、最近ポジションを増やしたということです。10月末現在、マイクロソフト株はセリグマン・テクノロジー&インフォメーション・ファンドの5.6%を占め、同ファンドで2番目に大きなポジションとなっています。
「サティアのリーダーシップの下で、マイクロソフトは食物連鎖のトップに躍り出た。彼らは何億人ものOfficeユーザーを虜にしている。莫大な利益を生むだろう。時間をかけても勝てないというシナリオは考えにくい」とヘルナンデス氏は評価しています。
まとめ
マイクロソフトはAIを活用して売上と利益を向上させています。特に、Microsoft 365 Copilotは、マイクロソフトのビジネスモデルにおいて重要な役割を果たすと考えられます。マイクロソフトの強みは、既に何百万人もの知識労働者にとって欠かせない存在であることです。このような背景から、マイクロソフトはAI分野での成功を確実にしていくことが予想されます。
*過去記事 マイクロソフト MSFT
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