近年、AI(人工知能)の発展に伴い、それを支えるコンピューターチップの需要が高まっています。その中でも特に注目されているのが、AIブームを牽引する半導体メーカーである「エヌビディア」です。同社は、過去2四半期にわたり、業績でウォール街を驚かせていますが、今後の展望に暗雲が立ちこめています。
エヌビディアの中国市場
エヌビディア(ティッカーシンボル:NVDA)は、中国への50億ドルの注文を抱えており、重要技術の輸出をめぐる米国の最新規則の影響を受けやすいと、ウォール・ストリート・ジャーナル紙が匿名の情報筋の話を引用して10月31日に報じました。これにより、エヌビディアの成長が阻害される可能性が指摘されています。
米国の輸出規制強化
米国商務省は10月初め、2022年に発表された中国によるAIやその他の先端技術へのアクセスを対象とした規則を強化すると発表しました。最新の規則では、エヌビディアが製造するような最もハイテクな半導体に焦点が当てられています。この基準以下の半導体の中国への販売でさえ、政府への届け出が必要であり、政府は個々の販売を禁止することができます。
中国市場の影響
エヌビディアのAI推進の中心となっているデータセンター事業では、売上の約20%が中国市場に依存しています。初めは、全世界での半導体需要の増加を受け、中国市場の影響は限定的とされていましたが、アナリストの中には長期的な成長の観点から中国市場の重要性を指摘する声もあります。
業績への影響
ジャーナル紙は、新たな規則が来年エヌビディアに数十億ドルの中国向け注文のキャンセルを迫る可能性があると報じており、同社の業績に50億ドルあまりの打撃を与える可能性が出てきました。
ファクトセットの調べでは、アナリストは2025年1月期のエヌビディアの売上高を813億ドル(うちデータセンター事業は631億ドル)と予想しています。中国からの受注50億ドルが帳消しになれば、コンセンサス予想には大きな下振れリスクがあることになります。
エヌビディアは今年、すでに中国への先端半導体の納入を終えており、新ルールが施行される前の2024年の受注を目指していたと、複数の情報筋の話を引用してジャーナル紙は報じています。
しかし、政府が介入し、輸出規制が即座に発効することを同社に告げたことにより、アリババ(BABA)やバイドゥ(BIDU)向けの新たな注文の受注が難しくなったとジャーナル紙は報じています。
エヌビディアの反応
投資情報誌バロンズが報じたところでは、エヌビディアの広報担当者は同誌に対して、先進的なDGXとHGXシステムには強い需要があり、それを満たすためにはかなりのリードタイムがかかると述べたそうです。
同スポークスマンによれば、エヌビディアは、追加供給の要求に応え、米国やその他の地域の幅広い顧客にこれらのシステムを割り当てるよう取り組んできたとのこと。
「これらの新しい輸出規制は、短期的には意味のある影響を与えないだろう」と広報担当者は付け加え、新しい規則が発表された後に発表されたエヌビディアの声明を繰り返したそうです。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA