台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング(TSMC)が先月、決算発表を行なった際に1つの製品カテゴリーを除き、ほぼ全ての製品カテゴリーの需要が弱くなったと現在の半導体の市場環境について述べました。
その唯一の例外がAI半導体です。具体的にはAIアプリケーションに使用される半導体市場を支配するエヌビディア(NVDA)向けグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の旺盛な需要についてTSMCは述べていました。
生成AIの盛り上がりにより、AIモデルの訓練や顧客へのサービスに必要な並列計算に最適なエヌビディアのハイエンドGPU、H100が現在不足しています。
エヌビディアの製品は今やテクノロジー業界にとって喉から手が出るほど欲しいものになっています。大企業や新興企業は、予算の優先順位を新しいAIプロジェクトに急激にシフトしており、そのために必要不可欠なGPUを求めています。
「(エヌビディアのGPUの)需要は供給を上回っている」とアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のアダム・セリプスキーCEOは今週、The Vergeとのインタビューで語り、顧客がエヌビディアGPUを継続的に使用するためにはAWSを使うことが最適だと自らのサービスの優位性を強調しました。
なぜ、これほどまでにAI半導体市場においてエヌビディアが圧倒的な立場にいるのか。エヌビディアと深い関係にあるコアウィーブの共同創業者でCTOのブライアン・ヴェントゥーロ氏がバロンズのインタビューで答えています。
2017年に設立されたコアウィーブは専門特化型のクラウド・プロバイダーです。人工知能、機械学習、リアルタイム・レンダリング視覚効果、ライフサイエンスなどの大規模ユーザーにGPUアクセラレーション・コンピューティングを新興企業や大企業に提供しています。同社はエヌビディアと緊密なパートナーシップを結んでおり、H100 GPUを市場に投入した最初のベンダーの1社です。エヌビディアは今年の4月、2億2100万ドルのシリーズB資金調達ラウンドを通じて同社に投資しています。
GPU市場で何が起きているのか?
現在GPU市場で何が起きているのかという質問に対してヴェントゥーロ氏は、今年の初めには、GPUの供給は安定していたが、4月から供給がかなり厳しくなったこと。その変化は急激で、納期が非常に長くなっていると述べています。
特にエヌビディアの最上位機種であるH100は、現在購入してもすぐには手に入らない状況だそうで多くの専門家や企業は、2024年の前半に商品を受け取ることを期待しており、次年度の第2四半期や第3四半期の供給に向けて計画を進めているとのことです。
エヌビディアの強み
なぜ顧客は、他社の製品ではなく、エヌビディアのAI半導体を切望しているのかという質問に対してヴェントゥーロ氏はエヌビディアの2つの強みを指摘しています。
1つ目の強みはハードウェアで、エヌビディアほど優れた半導体を作れる企業はないと同氏は述べています。2つ目はソフトウェアで、新興企業にとって市場投入までの時間は非常に重要で、AMDやTPU(グーグルのテンソル・プロセッシング・ユニット)の製品を使うためには技術スタック全体を作り直す必要があるため、それでは貴重な時間をロスしてしまうとのことです。
エヌビディアがCUDA(ソフトウェア・プログラミング・プラットフォーム)のエコシステムに多大な投資を行なってきたことをヴェントゥーロ氏は指摘し、信じられないほど先見の明があったと賞賛しています。
エヌビディアは今、基本的に他の誰よりも10年進んでいると同氏は見ています。エヌビディアだけでなく、彼らの顧客や開発者が、他のすべての人の先行研究を活用しながら、(ソフトウェア・ツールやライブラリで)そのエコシステムを構築しており、短期的にも中期的にも、エヌビディアを超える企業が現れるとは思えないと断言しています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA