生成AI関連で華々しい動きを見せるマイクロソフト(MSFT)やアルファベット(GOOGL)と比べて、アマゾン(AMZN)のクラウド事業が人工知能(AI)の分野で遅れをとっているのではとの見方があります。しかし、こうした見方に反し、モルガン・スタンレーはアマゾンの前途に対して楽観的な見方を示しています。
AI分野でのアマゾンの位置づけ
ブライアン・ノワック氏が率いるモルガン・スタンレーのアナリストチームは6月22日、投資家との対話を通じて得た見解を顧客向けメモで公開しました。
メモの中で、アマゾンのクラウドコンピューティング部門であるAWS(Amazon Web Services)を含む一部のテクノロジーリーダーがAIにおいて「不利」な状況にあるとの見方をアナリストたちは示しましたが、それでもアマゾンとその株価の前途について、AIの機会を含めて肯定的な見方をしています。
AI時代に成功するクラウド・ソフトウェア事業者の必須条件
モルガン・スタンレーのアナリストチームは、AI時代に成功するクラウドまたはソフトウェア事業者は以下の3つの要素を満たすべきだと主張しています。
- 複数のユニークでマルチモーダルな大規模言語モデルを開発
- オープンソースアプリケーションへのアクセス
- さまざまな業界向けの特定の目標を推進する能力
そして、アマゾンがこれらの要素をすべて満たすことができると彼らは予想しています。
アマゾンのAI戦略の成功例
アマゾンのAWSは既にAIに関する業界特有のユースケースに対応しています。具体的には、医療提供者向けのAIによるテープ起こしツールが挙げられます。これにより医療提供者は、編集する必要のない方法で会話を記録できます。また、スナップ(SNAP)との協業を通じて、スナップチャットユーザー向けのAIチャットボットも開発しています。
AIとパブリック・クラウドの将来性
モルガン・スタンレーのチームは、AIがパブリック・クラウド業界の市場機会を全体的に押し上げる可能性があると予測しています。
同チームが明らかにしたAWSのベースケース予測では、2022年から2025年の年間平均成長率は16%とされています。しかしこの数値は、アマゾンが市場シェアを維持し、市場全体の機会が拡大することを前提としたものです。それが実現し、「AIツールが企業の新たな採用やユースケースを促進する程度」によっては、同期間の成長率は24%にまで上昇する可能性があると彼らは見ています。
これらの要素から、モルガン・スタンレーのチームは、アマゾン株の「オーバーウェイト」の格付けと150ドルの目標株価を維持しています。
また、以上のような将来の動向は、アマゾンの株価によりプラスの影響を与える可能性があります。AIに対する投資家心理が現在、弱気であることから、さらなる上方修正と倍率の拡大が期待できると彼らは述べています。
アマゾンのAI事業に関する詳細を求める声が高まる中、モルガン・スタンレーのこの報告は一部の疑問を解消するかもしれません。彼らの視点からは、アマゾンのAI分野における将来性は非常に明るいものとなっています。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN