ウォール・ストリート・ジャーナルが人工知能(AI)業界が直面している大きな問題について報じています。それは、AIシステムの開発に不可欠な高度なグラフィックス・プロセッシング・ユニット(GPU)の供給不足の問題です。これはAI業界全体に影響を及ぼしており、AIモデルの開発や運用、そして企業が自身のAIサービスを構築する能力に制約をもたらしています。
エヌビディア製GPUの需要急増
AIの開発には高性能なGPUが必須で、そのほとんどがエヌビディア(NVDA)から供給されています。しかし、オープンAIによる人間のように質問に答えるチャットボット、ChatGPTの人気が高まるにつれ、これらのチップの需要が供給を大幅に上回る状況が発生しました。これはアマゾン(AMZN)やマイクロソフト(MSFT)などのクラウドサービスプロバイダーが、オープンAIのようなクライアントに対して提供できる処理能力を制約しています。
GPU入手難、業界全体に影響
このチップ不足により、世界でも有名なテクノロジー企業家たちでさえ、必要な処理能力を確保するのに苦労しています。オープンAIのCEOであるサム・アルトマン氏は最近、米国議会で、プロセッサのボトルネックを緩和するためにはChatGPTの使用者を減らす方が良いと述べました。
さらに、オープンAI競合企業であるX.AIを構築中のイーロン・マスク氏も同様の問題を抱えています。同氏は、多くのスタートアップ企業が求めるオラクル(ORCL)のコンピューティング容量を大量に確保していることが報じられています。
エヌビディアの対応と今後の見通し
このグローバルなGPUの需要に対応するため、エヌビディアは新しいフラッグシップチップ、H100の生産を増やしましたが、これらのGPUを利用できる可能性は依然として大幅に制限されています。この高まる需要により、チップのセカンダリーマーケットが形成されています。
AIスタートアップ企業は、この供給不足に対処するために、AIモデルをより効率的にする、必要なグラフィックスチップを搭載した自社のサーバーを購入する、あるいはオラクルのような人気のないクラウドプロバイダーに切り替えるなどの対策をとっています。このチップ不足の問題は少なくとも来年まで続くと見られています。
AIサービスの遅延
この状況は、AIサービスを構築する企業からの苦情を招いています。処理能力の不足により、クエリへの応答時間が遅くなることが問題となっています。この問題を解決するため、オープンAIは同社への最大の投資家でありデータセンタープロバイダーであるマイクロソフトとパートナーシップを結び、解決策を探っています。