エヌビディア(NVDA)が主催するGTCテクノロジー・カンファレンスが3月20日から23日の日程で開催されていますが、ジェンスン・フアンCEOは21日、その基調講演で、半導体メーカーが人工知能と次世代半導体製造の開発を加速させる方法を詳述し、ファウンドリがより小さなトランジスタをより速くエッチングできるようにするためのソフトウェアと企業向けの人工知能製品の数々を紹介しました。
フアンCEOは、同社のcuLithoソフトウェアライブラリを紹介。これは、シリコンウェハーにエッチングされるトランジスタの解像度を向上させるためにアルゴリズムを使用するプロセス、計算機リソグラフィー(computational lithography)を改善するもので、”cu”の部分は同社のCUDA並列コンピューティングおよびアプリプラットフォームを表しています。
世界最大の受託半導体メーカーである台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSM)、オランダの半導体製造装置メーカー、ASMLホールディング(ASML)、米国の半導体設計会社、シノプシス(SNPS)の3社と協力して、リソグラフィソフトウェアにグラフィック・プロセシングユニットのサポートを統合する予定であるとファンCEOは明らかにしています。
「リソグラフィが物理学の限界にある中、エヌビディアがcuLithoを導入し、パートナーのTSMC、ASML、シノプシスと協力することで、ファブはスループットを高め、二酸化炭素排出量を減らし、2nm以降(の半導体)の基礎を築くことができる」と同CEOは述べています。
エヌビディアはcuLithoソフトウェアの価格設定やビジネス・モデルについては明言しませんでしたが、cuLithoアーキテクトのVivek Singh氏は、「我々は様々な総所有コスト分析を行いましたが、コスト、生産性、出力、電力、スペースなど、重要なすべてのベクトルにおいて、cuLithoを使用することは非常に有利です」と述べています。
このソフトウェアにより、エヌビディアのGPUベースのデータセンターシステム「DGX H100」500台が、CPUベースのシステム4万台と同じ作業を行うことができるそうで、その結果、必要な電力やスペースが削減され、環境への影響も軽減され、かつては数週間かかっていた処理が一晩で処理できるようになるとエヌビディアは述べています。
TSMCの魏哲家CEOは、「cuLithoチームは、高価なオペレーションをGPUに移行することで、コンピュテーショナルリソグラフィーのスピードアップに見事な進歩を遂げました。この開発は、TSMCが逆リソグラフィー技術やディープラーニングなどのリソグラフィーソリューションをチップ製造により広く展開し、半導体のスケーリングの継続に重要な貢献をするための新しい可能性を開くものです。」とエヌビディアが発表した資料の中で述べています。
またAMSのピーター・ウェニンクCEOは、このソフトウェアが「計算機リソグラフィー、ひいては半導体スケーリングに多大な利益をもたらすはずだ」と述べています。
エヌビディアはまた、AIを民主化し、その開発の重要なリーダーになるための動きとして、新しい人工知能サービスをリリースしました。
AIビデオ用のL4、画像生成用のL40、ChatGPTのような大規模言語モデル展開用のH100 NVL、推薦モデル用のGrace Hopperという、開発者が特殊な人工知能モデルを構築するための4つの新しいプラットフォームを開始すると同社は発表しています。
Grace HopperとH100 NVLは今年の後半に発売され、L40は現在発売中、L4はGoogleのプライベートプレビューで入手可能です。
L4については、アルファベット(GOOGL)のグーグル・クラウド・プラットフォームが早期に採用し、同社のVertex AI機械学習プラットフォームに統合しており、AIにおけるエヌビディアの「最大のコラボレーション」になっていると、アナリストとの会合でファンCEOは述べています。
また、エヌビディアは「AIのiPhoneモーメント」と称して、企業がシンプルなブラウザ上で人工知能モデルに瞬時にアクセスできるサービス「DGX Cloud」を月額37,000ドルで提供開始しています。
そして、言語、画像、動画、3Dを扱えるモデル作成サービス「Foundations」、「NeMo」、「Picasso」のサービスも開始しています。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA