現在世界で起きている金融危機は、株式市場が再び投資家に利益をもたらす状態に戻るために必要なものである可能性があります。
過去の金融危機に対する米国株式市場の反応を分析すると、金融危機の直後、株価は当然のことながら下落しましたが、ほとんどの場合、すぐに回復しており、平均して1年後には、危機が発生する前の水準を大きく上回っているそうです。
コーネル大学のマシュー・バロン氏、マサチューセッツ工科大学のエミール・ヴァーナー氏、プリンストン大学のウェイ・ジオング氏が作成したデータベースは、1870年以降に米国で起きた金融危機が分析の対象になっていますが、平均して、危機の発生から2ヶ月以内に株式市場の安値が更新されたそうです。S&P500の総合実質収益指数は、平均してわずか5ヶ月でパニック発生前の水準よりも高くなったそうで、危機の1年後には、平均して8.0%の上昇を記録しているとのことです。
今回の金融危機の後、株式市場が同様のシナリオをたどるとすれば、S&P500は今年の4月か5月に安値をつけた後、力強く上昇し、夏の終わりには3月初旬の水準を超え、2024年3月には名目ベースで直近の水準を2桁上回る水準になります(危機後の1年間の平均的なリターンである8%にインフレ率を加えたもの)。
しかし、8%はあくまでも平均値であり、危機ごとにかなりのばらつきがあります。1870 年以降の金融危機で最も回復期間が長かったのは、直近で発生した 2008年9月のリーマンショックです。S&P500が安値を更新するのに6ヶ月、危機発生前の水準より上昇するのにさらに1年以上かかっています。
このような「急落→急回復」のパターンは、金融危機だけでなく、地政学的・経済的危機に対する株式市場の典型的な反応です。投資戦略上、最もやってはいけないことは、危機に怯えて保有株を売却してしまうこと。そうすることで、非常に不利な結果になる可能性が高いことを金融危機後のデータは示しています。