金利の急上昇により株式や債券の価格が大きく下落したこの1年。ポートフォリオを構成する銘柄選びにはより慎重になることが求められています。そんな中、注目されるのが企業のフリーキャッシュフローを基準として投資する銘柄を選択する方法です。
この投資方法を実践しているのが、パッカー米国キャッシュカウ100ETF(COWZ)です。同ETFは過去5年間、非常に優れたパフォーマンスを示しています。2022年の運用実績を見ると、iシェアーズ・ラッセル1000バリューETF(IWD)が-8%、SPDR S&P 500 ETF トラスト(SPY)が-18%だったのに対し、同ETFは0%と2022年の弱気相場でも非常によく持ちこたえたことがわかります。
3月7日までの過去5年間の運用実績で見ると、COWZ 78%、IWD 40%、SPDY 59% となり、長いレンジで見てもCOWZは優秀な成績を収めています。
COWZの現在の運用資産額は129億ドルで、1年前の26億ドルから大きく増えています。
COWZの銘柄選びの基本方針は、現代社会に適した方法でバリュー株を選ぶことです。株式が簿価に比べて低く取引されている場合、「バリュー」株と呼ばれてきましたが、「今日の株式市場の価値の大部分は、有形資産ではなく無形資産に基づいているため、この尺度はあまり機能しない」とCOWZを運用しているパッカーETF ディストリビューターズの社長であるショーン・オハラ氏は考えています。
具体的な事例としてあげられているのが、Googleの親会社であるアルファベット(GOOGL)です。同社の市場価値は、「検索を支配する方法を見出したという事実に基づいており、それらは無形資産である」とオハラ氏は述べています。
S&P500などの指数は浮動株調整後の時価総額加重平均で算出されているため、流動性主導の強気相場では、最大手のハイテク企業が中心となっていました。現在でもそれは変わらず、SPYが保有する上位5社はアップル(AAPL)、マクロソフト(MSFT)、アルファベット、アマゾン(AMZN)、エヌビディア(NVDA)で、この5社がポートフォリオの20%を占めています。
「製造業から消費業への経済の変化、テクノロジー、ブランド、健康志向の経済など、無形資産によって繁栄していることを考えると、理にかなっている」とオハラ氏は述べています。
こうしたことから、COWZでは銘柄を選ぶルールとして、直近12ヶ月のフリーキャッシュフローの利回りに基づくことにしています。企業のフリーキャッシュフローとは、資本支出後の残りのキャッシュフローであり、配当金の支払い、自社株買い、買収、あるいはその他の企業目的に使用できる資金です。
直近12ヶ月のフリーキャッシュフローの利回りは、直近の4回の四半期決算で報告された1株当たりフリーキャッシュフローの合計を現在の株価で割ったもので算出されます。
COWZは四半期ごとに再構成され、リバランスされています。選択の対象はラッセル1000の全構成銘柄ですが、フリーキャッシュフローの利回りが通常入手できない業界であるため、金融株は全て除外されています。また、今後2年間に四半期純損失を計上すると予想される企業も除外されます。
残った銘柄を、フリーキャッシュフローの利回りでランク付けし、上位100銘柄が最終リストとなります。キャッシュフロー利回りで加重平均され、加重平均の上限は2%となっています。
オハラ氏は、フリーキャッシュフローの利回りは、「経済サイクルの中で何が起こっているかを予測する大きな材料になる」と述べています。
そのおかげで、COWZは大手テクノロジー企業の成長率の鈍化が明らかになる以前にハイテク株から離れ、エネルギー、産業、素材、ヘルスケアセクターの企業を保有することに方針を変えることができたそうです。
このような銘柄スクリーニングは、割安な銘柄を見極め、幅広い経済動向に対応することに加え、企業のフリーキャッシュフローの利回りが低下している場合や、アナリストが今後純損失を予想する場合には、今後の問題を指摘することができるとオハラ氏は述べています。
こうした銘柄選びが効果をあげたものとしてインテル(INTC)の事例があげられます。COWZはインテル株を2020年9月から2021年12月まで保有していましたが、手放しました。その後、2022年1月から現在までインテルの株価は45%下落し、先月には配当を66%カットしています。
3月8日時点のCOWZの上位10銘柄の保有状況は以下の通りです。前回12月のリバランス以降、株価が上昇したため、ウェイトが2%を超えているものもあります。