世界最大の受託チップメーカーである台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー(TSM)は1月12日、2022年10~12月期決算を発表しました。
売上高、純利益がともに四半期として過去最高を更新。売上高は43%増の6255億3,000万台湾ドル。米ドルでの売上は199億3000万ドルとなる見込みで、前年度から27%増加しました。
純利益は前年比78%増の2959億台湾ドル(約97億2000万ドル)で、S&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスによるアナリストの予想の2880億8000万台湾ドルを上回りました。
しかし今後の見通しについては、2023年1~3月期に売上が167億ドル〜175億ドルに落ち込み、その後下半期に回復、通年で売上が増加すると予想しています。
TSMCの経営トップである魏哲家CEOはアナリストに対し、「業界全体は若干落ちるが、TSMCは若干伸びると予想している」と述べています。
TSMCは、一部の同業他社よりも回復力がある状態が続いています。サムスン電子は先週、2022年第4四半期に営業利益が69%減少したと発表、マイクロン・テクノロジー(MU)などのメモリーチップメーカーは人員削減を進めていますが、TSMCは、次世代のスマートフォンを動かすと期待される「3ナノメートル」チップを含むハイエンドチップ市場での優位性に助けられています。
ウェドブッシュのアナリストはリサーチノートで、「TSMCは、中期的な競争リスクが限定的で、業界が景気循環の谷に苦しんでいるにもかかわらず、依然として過去の倍率を下回って取引されており、TSMCに対するポジティブな見方を変える理由はないだろう」と書いています。
一方、サスケハナ・ファイナンシャル・グループのアナリストは、TSMCが潜在的な悪材料をすべて一度に発表し、需要の減速に直面して一部の製品の割引を開始しなければならない可能性を示唆することをしなかったことに失望したと述べています。
同アナリストは、「TSMCがコンセンサス予想のリスクを完全に取り除くのに十分なガイドやコメントを提供したとは思わない」と書いています。
TSMCは年間設備投資計画について320億ドルから360億ドルの間に設定されることを明らかにしています。これは、市場環境の悪化に対する懸念から同社が10月に引き下げた2022年の予算363億ドルから最大1割以上減らすことを意味し、5年ぶりの減額となります。
同社は台湾で今後数年内に先端の新工場を少なくとも11工場、相次ぎ立ち上げる予定のほか、米国ではアリゾナ州に2つの新工場を建設する予定となっています。米国内工場の建設コストは台湾の4〜5倍に上るものの、米国製チップにプレミアムを課すことで利幅を維持したいTSMCは述べています。