世界の経済が減速し悪化しようとも、、オンプレミスのレガシー技術からクラウドへの移行を妨げることにはならず、実質的なコスト削減と信頼性・柔軟性の向上が実現されるため、クラウド・ソフトウェア需要は堅調に推移すると多くのアナリストが予測していました。
しかし、その予測を覆す事態が現在進行中であることが明らかになったのが先週発表された二つのクラウド・ソフトウェア企業、セールスフォース(CRM)とクラウドストライク(CRWD)の決算報告でした。
営業・マーケティング用クラウドソフトウェアで市場をリードするセールスフォースが発表した四半期決算は、売上高が予想を下回り、投資家の期待を裏切る結果となりました。第3四半期の売上高は、ウォール街のコンセンサスを10%近く下回り、62億1000万ドルとなり、前年比での成長率はわずか5%となりました。
決算説明会で、セールスフォースの幹部は、第3四半期が進むにつれて「より厳しい購買環境」が見られるようになり、顧客は投資に対するリターンを求めて、使ったドルすべてをますます吟味するようになったと述べています。
共同CEOのマーク・ベニオフ氏は、まだそれほどひどくはないものの、現在の顧客の購買行動や不確実性を、2001年や2008〜09年の金融危機で見たものと比べています。また、別の幹部は、同社がコスト構造を「厳しく検討」すると述べて、将来的にはさらなる経費削減と人員削減があるかもしれないことを示唆しています。いずれにせよ、同社がすぐに以前のような高成長軌道に戻ることは難しいようです。
セールスフォースだけではありません。クラウド・サイバーセキュリティ企業のクラウドストライク・ホールディングスも四半期決算を発表し、1月期の売上ガイダンスをコンセンサスを下回る内容で提示しました。「クラウドストライク 決算発表後の時間外で20%下落」
クラウドストライクのCEOであるジョージ・カーツ氏は、投資家との電話会議で、四半期中に不況の懸念が高まったため、中小企業が購入の引き金を引くのに時間がかかっていると述べています。クラウドストライクは現在、法人顧客はたとえ年間予算が残っていたとしても、今後数カ月は支出をためらうだろうと予想しています。
J.P.モルガンのアナリスト、マーク・マーフィー氏は、業界のトーンが大きく変化していることを指摘しています。「マクロ経済は悪化しているように見え、7月頃に見られた慎重で楽観的な言葉の大半も消えてしまったように見える。どのベンダーも無傷ではいられないと思う」と、同氏は顧客向けメモに書いています。
クラウドストライクの株価は決算発表の翌日に15%急落し、セールスフォースの株価も決算後に8%下落しました。
当面は厳しい状況が数四半期は続くことが予測されるため、クラウド・ソフトウェアの投資家は、バリュエーションがもっと安くなるか、本当の底値が見えてくるまでは、我慢するのが得策だという意見が強くなっています。
*過去記事はこちら クラウドストライク CRWD