トレードデスク(TTD)は、プログラマティック広告(コンピューター、モバイル、コネクティッドテレビにおける広告掲載の動的な電子交換)の領域で圧倒的な力を発揮しています。同社は、バイヤー(主に広告代理店)が最適化された視聴者とマッチングするリアルタイムのデータ駆動型マーケティングキャンペーンを容易に定義できるようにするバイサイドプラットフォームを運営しています。
デジタル広告は今、変革期にあります。これまで世界のデジタル広告市場の成長の原動力であった第三者である広告仲介会社がサードパーティークッキーを使い、さまざまなサイトの閲覧履歴を追跡し、ユーザーごとの好みや属性を推定するというやり方が、データ乱用やプライバシー侵害への批判から規制されつつあるからです。
アップル(AAPL)とアルファベット(GOOGL)はサードパーティークッキーに加え、スマホの端末IDの共有の制限に動いており、その結果、デジタル広告の精度が落ちてクリック率が下がると見られています。
従来とは異なる方法が求められており、そこで注目されているのがトレードデスクが構築を進めているユーザー識別システム「UID2」です。
ユーザーの同意を得た上で、サイトのログイン時に使うメールアドレスを不規則な文字列に変換して共通IDを生成し、サイトや端末をまたいで利用者を識別できるようにこのシステムはなっています。
スポーツのライブストリーミングサービスであるフボTV(FUBO)は、UID2を採用した最初の大手コネクテッドテレビ(CTV)プロバイダーの1つであり、非常にうまく機能しています。フボTVでは、広告収入が広告インプレッション数よりも113%も速いスピードで増加しています。
Vox Mediaやウォルト・ディズニー(DIS)のESPN、ABC、HuluなどがUID2を採用しており、日用消費財の製造で世界最大手のひとつであるプロクター・アンド・ギャンブル(PG)は、9月にUID2のサポートと採用を発表しています。
アルファベットは、第3四半期にGoogleの広告収入が前年同期比で2%減ったことを報告しました。メタ・プラットフォームズ(META)は、平均広告価格が前年同期比で18%も下がったことを一因として、4%の売上減を報告しています。
そんな中、トレードデスクは11月9日に発表した第3四半期決算で前年同期比31%増という売上をあげ、「広告主が当社のプラットフォームを通じて、オープンなインターネット上でのデータ駆動型広告の精度と関連性を受け入れているため、当社はシェアを拡大し続けています。」と共同創業者でCEO のジェフ・グリーン氏は同社の今後の成長に自信を深めています。
「UID2」は、デジタル広告市場でシェアを拡大し続けるための重要なアドバンテージであり、デジタル広告費がアルファベットやメタといった業界大手からトレードデスクに流れるという状況は2023年も続くことが予想されます。
*過去記事はこちら トレードデスク TTD