マイクロソフト(MSFT)が発表した2022年7~9月期決算で明らかになったことは、クラウドコンピューティングが景気後退と無縁でいられるわけではないということでした。
この「不況はクラウドコンピューティングを減速させるか?」という命題は、今週の大手ハイテク企業の決算発表で注目されたポイントのひとつでした。
*過去記事「ビックテック決算ウィークで注目される5つのポイント」
マイクロソフトは、パブリッククラウドコンピューティング事業であるAzureの売上成長率(恒常為替レートベース)が42%となり、6月期に続き、ガイダンスを1ポイント下回ったと発表しました。さらに悪いことに、12月期にはさらに5%ポイント減速して37%になると予想しています。ほとんどの基準ではまだ素晴らしい成長と言えますが、アナリストはこの規模の減速を予想しておらず、マイクロソフトの株価は10月26日、6%以上下落しています。
この結果は、消費型ビジネスモデルを採用するソフトウェア企業に対する投資家の見方をより厳しいものにしています。ほとんどの企業向けソフトウェア会社は、永久ライセンス(ソフトウェアをそのまま購入し、長期間にわたって保守料を支払う)を販売するか、あるいは、一定期間のユーザー数に連動するサブスクリプション・ベース・モデルを提供しています。しかし、クラウドコンピューティングサービスは、光熱費のように使用量に応じて課金される傾向にあり、使えば使うほど料金が高くなる仕組みになっています。
マイクロソフトは決算発表後の電話会議で、Azureの成長が鈍化しているのは、顧客がAzureのワークロードを「最適化」するための努力を反映していると説明しましたが、シティのアナリスト、タイラー・ラドケ氏は、Azureの成長鈍化と最適化に関する同社のコメントは、消費型ビジネスモデルを採用する他のクラウド企業にとって「ネガティブな読み筋」となり、スノーフレーク(SNOW)、モンゴDB(MDB)、エラスティック(ESTC)といった同様のモデルを展開する企業の懸念材料となる旨を指摘しています。
マイクロソフトはエネルギーコストの上昇によるクラウド事業への影響も訴えており、2023年6月期のエネルギーコスト増を8億ドルと予想していますが、ラドケ氏はこれはマイクロソフト固有の問題だと見ています。
シュティフェルのアナリストであるBrad Reback氏も同様に、消費モデルを持つ企業へのリスクを指摘し、ラドケ氏と同じようにアマゾン(AMZN)のAmazon Web Servicesやデータドッグ(DDOG)の名前を挙げています。また、ディジタルオーシャン(DOCN) についても、エネルギーコストの上昇に脆弱であるとし、リスクを指摘しています。
グッゲンハイムのアナリスト、ジョン・ディフッ氏は、Azure、AWS、Google Cloudの後を追って、クラウドコンピューティングのトップクラスに食い込もうとしているオラクル(ORCL)との競争激化が価格に影響を与えているのではないか、と考えているようです。
「我々は最近オラクル・クラウドワールドに参加し、オラクルの経営陣は、AWSサービスに対して優れたパフォーマンスを発揮するOCI(Oracle Cloud)を半額で販売する能力について議論した」と、ディフッチ氏は四半期決算のレビューを行ったリサーチノートに記し「AzureのサービスもAWSと同じような価格設定になると考えている」と予想しています。
マイクロソフトが発表した期待はずれの四半期決算に対して、ウルフリサーチのアナリストであるアレックス・ズーキン氏は、「冬が来た」と表現し、「それは誰にでも訪れるもので、無傷でいられるソフトウェアベンダーはいない」と述べています。
10月26日の市場では、アマゾンが4%近く下落したほか、データドッグ、スノーフレーク、デジタルオーシャンなど上記で言及された企業の株価が軒並み5%〜7%下落しています。
*過去記事はこちら マイクロソフト MSFT