アマゾン 今後数年で株価2〜3倍の可能性ありとバロンズが評価

アマゾン 第2四半期決算プレビュー」でお伝えしました通り、アマゾン(AMZN)の短期的な見通しについては厳しく見ているアナリストがほとんどですが、中長期的な見通しについては強気であるアナリストがほとんどであることも共通しています。

そんな中、米国の経済誌バロンズがアマゾンの株価の今後の動向に関する記事を掲載していますが、同誌も「直近の四半期は悪いだろうが、未来はこれ以上ないほど明るい」と見ています。「アマゾンの株価がこれほど魅力的であることは稀であり、今後数年間で、株価は2倍、3倍になる可能性がある」と同誌は予想しています。

アマゾンの強気筋から見れば、同社を悩ませている問題はつかの間のものであり、織り込み済みであるとバロンズは見ています。今年末から2023年にかけて経済が不況に陥る可能性はあるものの、その不況が永続することはないと同誌は見ており、一方、eコマース市場は拡大を続けていて、アマゾンのシェアは約40%と依然として大きく、さらにシェアを拡大する余地もあるとしています。

広告事業についてもバロンズは強気です。アップル(AAPL)がiPhone上での消費者の行動に関する情報を共有することに厳しい姿勢を示していることから、広告主は広告費を使う場所をフェイスブックや、YouTube、スナップ以外に求めていると同誌は見ています。

多くの広告バイヤーは、消費者の購買意欲が表面上明確である媒体を選択しており、フェイスブックなどにおいては消費者が何を買いたいかを推測しなければならないのに対し、アマゾンの場合は検索ボックスへの入力などから消費者が買いたいものを正確に把握することができるとバロンズはその優位性を指摘しています。どうやって消費者の欲しいものを把握するかが難しくなっているデジタル広告市場において、「アマゾンの広告市場は金鉱のようなもの」というのが同誌の評価です。

そして、バロンズが最も高く評価しているのが、巨大なクラウドコンピューティングプラットフォームであるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)です。

アマゾンが2015年にAWSの業績を公表し始めて以来、この事業はアマゾンの営業利益の半分以上を占め、2021年には全体の75%近くを占めるようになりました。2022年はEC事業が赤字になる可能性が高いため、AWSはアマゾンの営業利益の150%を構成すると予測されています。

売上高が820億ドル近いAWSは、世界最大級のソフトウェアおよびサービス企業であり、オラクル(ORCL)、IBM(IBM)、SAP(SAP)よりも大きく、いわゆるSaaS型サービス企業で最大のセールスフォース(CRM)の倍以上の規模があります。

バロンズはAWSは現在の規模からさらに大きくなると見ており、「ベゾスが2021年にCEOを退任する際に、後継者としてAWSのアーキテクトであるアンディ・ジャシーを選んだのも不思議はない」と書いています。

バロンズは今回のアマゾンに関する強気の記事を書く際に、ウォール街のアナリストが同社の真価を見極めるために行った以下の4つのアプローチを参考にしたそうです。結論はそれぞれ異なるものの、共通しているのはアマゾンの各事業価値の総和は、市場価値よりはるかに大きいということ、つまり市場に過少評価されているということです。

ニーダム:ローラ・マーティン

ニーダムのアナリストであるローラ・マーティン氏はエンターテインメントに焦点を当てたアプローチを展開しています。同氏は、アマゾンの企業価値の大部分はメディア事業から来ていると見ており、アマゾン・プライム・ビデオ、アマゾン・ミュージック、Twitch、広告の各事業の合計の価値を5000億ドル以上と評価しています。

また、同氏はAWSの価値を6500億ドルと評価しており、この2つの合計で1兆1500億ドルとし、これだけで現在のアマゾンの時価総額1兆2500億ドル余りのほとんどをカバーしており、eコマースの価値が現在の株価には全く反映されていないと見ています。

トゥルイスト:Youssef Squali

トゥルイストのインターネットアナリストであるYoussef Squali氏は、異なるアプローチをとっています。同氏はアマゾンの「サードパーティー(アマゾンのグローバルマーケットプレイスを活用して製品を販売している企業)・リテール」サービス事業に5000億ドル以上の価値を見いだし、これには何百万人もの販売事業者に提供される物流やその他のサービスが含まれるとしています。

さらに、Fire TVやKindleなどの電子機器や数千のAmazonBasics製品など、Amazonブランドの商品である「ファーストパーティ」小売事業に1720億ドルの価値があると見ています。そして、同社のサブスクリプション事業(基本的にプライム)は1000億ドル強と評価しています。

最後に、2022年の推定税引き前利益の30倍の倍率で、AWSを8670億ドルと評価し(AWSより成長が遅いセールスフォースは、税引き前利益の約30倍で取引されています)、最終的に、Squali氏はアマゾンの価値を1兆7000億ドルとしています。

J.P.モルガン:ダグ・アンマス

J.P. モルガンのアナリスト、ダグ・アンマス氏は、アマゾンを2つに分けるという、最もシンプルなアプローチを展開しています。

同氏は、AWSの価値を、2023年の金利・税金・減価償却費・償却前利益(Ebitda)520億ドルの20倍とし、1兆ドル強になると予測しています。小売事業については、2023年の推定商品総価値(GMV)の1.25倍を適用し、9500億ドル強としました。

ウォルマート(WMT)がGMVの約1倍で取引されているのに対し、アマゾンの小売事業は「著しく高い」成長を遂げているため、より高い倍率が妥当であるとしています。同氏は、アマゾンの総価値は2兆ドルになると考えています。

レッドバーン:アレックス・ハイスル

最もアグレッシブな総価値モデルは、レッドバーン・リサーチのアナリスト、アレックス・ハイスル氏によるものです。

同氏は6月、AWSの価値は3兆ドルだと結論づけました。アマゾンは小売株のように取引されており、AWSがビジネスにとって圧倒的に重要であることが無視されていると同氏は考えています。

実際に試算するにあたっては、同氏はより保守的な見方を取り、3兆ドルという見積もりの3分の2である2兆ドルをAWSの価値として計算しています。

それに、同社の損益計算書に記載されているオンラインストア、リアルストア、第三者販売サービス、サブスクリプション、広告などの各ビジネスラインの貢献を加え、総価値を2兆8,000億ドルと算出しました。

この額は現在2兆5000億ドルの価値を持つアップル、2兆3000億ドルのサウジアラムコを抜いて世界で最も価値のある企業にアマゾンがなることを意味します。

ハイスル氏はアマゾン株の目標株価を270ドルとし、ストリートで最も高い価格を設定しています。

これら4人のアナリストの評価を参考にバロンズはアマゾンの株価が今後大きく上昇すると予想しています。AWSの躍進は今後も続くことが予想されており、それにある時点で再び成長し始めるであろう小売の上昇が加わった時、アマゾンの株価は大きく飛躍しているだろうと同誌は見ています。

*過去記事はこちら アマゾン AMZN

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