クラウドサービスの市場を支配するアマゾン(AMZN)、マイクロソフト(MSFT)、グーグルの3強はパンデミックの時代にその力を大きく伸ばしました。そして現在、その勢力をさらに拡大する構えです。その情況を紹介する記事をウォール・ストリート・ジャーナルが掲載していましたので、ご紹介します。
シナジー・リサーチ・グループによると、今年第1四半期の世界のクラウドサービス支出530億ドルのうち、この3社が占める割合は65%で、4年前の52%から上昇しました。この重要かつ急成長する市場における3社の力が強まっているのは、3社が投資を継続できる規模を持ち、激動の時代に安定を求める顧客を引きつけることができるからだとアナリストらは分析しています。
シナジー・リサーチ・グループによれば、3社は新興企業のように拡大を続けており、最近の四半期では売上が前年同期比30%以上増加しているそうで、より多くのクラウド支出が最大手のプラットフォームに移行するにつれ、小規模なクラウドサービスの市場シェアは低下しているそうです。
パンデミックは、生活と仕事のオンライン化の進展を促進し、クラウドとして知られるリモート・コンピューティング・サービスへの支出を促しました。サーバーとそれを収容する施設に大規模な投資を必要とするこの業界の経済性から、クラウドのトップ企業はその優位性を強化してきたとアナリストは分析しています。
サーバーファームのネットワークが大きくなればなるほど、その構築と運用にかかる平均コストが下がり、3社が優位に立つことができます。また、クラウド用の国産チップ、ソフトウェア、その他の技術を開発する能力でも優位に立つことができます。
アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)のセールス&マーケティング担当上級副社長、マット・ガーマン氏は、「我々は15年前からこの事業にかなりの投資をしており、簡単に追いつけるようなものではない」と述べています。
一方、この分野の中小企業は、より厳しい資金調達環境に直面することが予想されるとアナリストは見ています。これは、株価の下落により、投資家が大きなリスクを取ることを躊躇しているためです。さらに、顧客は支出の一本化を求めており、より信頼性が高く、幅広い機能を提供する最大手企業を選んで利用する傾向が強いそうです。
例えば、旅行ソフトウェア会社のSabre Corp.は、コスト削減とビジネスの柔軟性を高めるために、クラウドをもっと活用することを決めましたが、クラウドプロバイダーを利用することで、エンジニアやその他の従業員にとってテクノロジーの利用を簡素化できるため、グーグルのクラウドを利用することが多くなったそうです。
グーグルの大量のデータを分析する能力と豊富な機能メニューにより、Sabre社は支出を1つのベンダーに集中させることができ、多くのベンダーを扱う時間と労力を節約できると、Sabre社の最高情報責任者のJoe DiFonzo氏は述べています。
「何百ものサードパーティソフトウェアを個別に管理していたのが、グーグル・クラウドの利用が中心になりつつある」と同氏は述べています。直近ではグーグルが同社のクラウドサービスに対する支出の約28%を占めていますが、年末までにはSabreのクラウド予算の65%を占めるようになるだろうと同氏は見積もっています。
ファクトセットが調査したアナリストによると、上位3社のクラウドサービスの売上を合計すると、昨年は33%以上伸び、今年も29%近い成長が見込まれるとのことです。
近年、新旧のクラウド企業の中には、顧客がクラウドとやり取りするためのソフトウェアやサービスを提供することでビジネスを成長させている企業もあります。しかし、クラウドのホスティングにおいて3社が優位に立つということは、他のクラウド企業は通常、3社と協力しなければならないことを意味し、3社が後に競合製品を提供できる立場にあることを意味します。
スノーフレーク(SNOW)は、近年急成長しているクラウド・サービス・プロバイダーの1つですが、利用するクラウドプラットフォームとの競争が激化していることに直面しています。スノーフレークの年間売上高は過去2会計年度とも2倍になりましたが、今年の成長率は66%に鈍化すると予想されています。
異なるクラウド間で顧客がビジネスデータを分析するのを支援する同社は、グーグルが自社の競合データ分析製品「BigQuery」の販売を推し進めることで、同社の売上を減らそうとしていると非難しています。
他のソフトウェア新興企業は、アマゾンが競合するクラウドソフトウェアを開発していると非難していますが、当のアマゾンは、顧客のニーズに応えているだけだと述べています。
新興企業のSushi Cloud LLCのようなクラウドプラットフォームのニューカマーは、クラウド上で人工知能ソフトウェアをより安価に稼働させるといったニッチな分野に注力することで、突破口を開こうと試みています。また、クラウドフレア(NET)のような企業は、クラウドのトップ企業はデータを移動するのに高額な料金を設定していることが多いため、低料金のサービスを提供することで、顧客にアピールしようとしています。
しかし、同様のサービスに大手3社が本腰を入れて乗り出すと両社が窮地に立たされること明白です。3社のクラウド支配力が高まりつつある中、他のクラウド・サービス企業はこうした脅威にこれからも悩まされることになると思われます。