エヌビディア(NVDA)のビデオゲーム事業の健全性を懸念する声が高まっており、当面株価の下落が続くとウォール街は見ていますが、そうした問題は短期的なものである可能性が高いと思われます。
エヌビディアのビデオゲーム事業は、パーソナルコンピューター(PC)に使用される同社の新しいグラフィックカードにアップグレードするゲーマーが増えれば、長期的に大きく飛躍する可能性があります。
また、ビデオゲーム分野には、エヌビディアの成長を加速させる可能性のある別の新しいトレンドがあります。それはクラウドゲーミングで、ゲーマーが遠隔地のデータセンターからPC、Mac、スマートフォンに有料でゲームをストリーミングできるようにするものです。
クラウドゲーミングは、エヌビディアに次の大きな成長のチャンスをもたらす可能性があります。市場調査会社Newzooによると、クラウドゲーミング市場の昨年の売上は16億ドルに上ったと推定されています。また、2021年のクラウドゲーミングの有料ユーザー数は推定2,370万人だということです。
この黎明期ではあるが有望な市場においてエヌビディアは最大のプレーヤーであると推定されています。同社は3月の投資家向けイベントで、同社のクラウドゲーミングサービス「GeForce Now」のユーザー数が1,500万人であることを明らかにしました。Newzooの推計によれば、この数字はエヌビディアが2021年のクラウドゲーム市場の総加入者数の約60%を支配していることになります。
また、エヌビディアはクラウドゲーミングの売上でも大部分を支配しているようです。2021年度のエヌビディアのゲーミング全体の売上高は124億6000万ドルで、そのうちクラウドゲーミングは10億ドル強の売上高となっています。Newzooの2021年度のクラウドゲーミング市場の売上予測に基づくと、エヌビディアはこの新生市場の60%強の売上シェアを握っている計算になります。
今はゲーム事業の中でわずかな割合に過ぎないクラウドゲーミングですが、長い目で見ればGeForce Nowのビジネスが大ブームになってもおかしくはありません。クラウドゲーミング市場の売上は2027年までに140億ドルに達し、今後5年間の年平均成長率は64%に達する可能性があるからです。
エヌビディアがこの潜在的な利益をもたらす市場のシェアを維持することに成功すれば、GeForce Nowはエヌビディアにとって5年後に80億ドル以上のビジネスになる可能性があります。これは、2022年度にエヌビディアのゲーム事業が生み出す売上全体を考えると、大きな数字と言えるでしょう。
さらに、クラウドゲーミングの市場規模は、第三者機関の試算によれば、2030年までに220億ドルに達する可能性があり、この分野ですでに優位な立場にあるエヌビディアにとって、長期的に収益を上げることができる分野であることを示しています。
エヌビディアが現在、クラウドゲーム市場を支配しているのには、いくつかの理由があります。
まず、GeForce Now RTX 3080プランを通じて、ハイエンドゲームを魅力的な価格でプレーヤーに提供したことです。
このプランの価格は月額19.99ドル、6か月99.99ドルで、ゲーマーは、メーカー希望小売価格(MSRP)699ドルからのRTX 3080グラフィックスカードを搭載したプレミアムゲーミングPCを購入するのにかかる費用のほんの一部を支払うことでゲームを楽しむことができます。これは、グラフィックスカードの価格が供給不足ではるかに高い現状ではなかなかできないことです。
第二に、GeForce Nowは、80カ国で利用可能な1,200以上のゲームライブラリを誇っています。これに加えて、魅力的な価格設定により、10億台の低性能PCとChromebook、同数のiOSとMacデバイス、40億人のAndroidユーザーからなる膨大な獲得可能な市場を開拓する上で、同社は確固たるポジションを築いているのです。
最後に、エヌビディア は、クラウド・ゲーミング・ビジネスを推進するために、主要企業と提携しています。例えば、サムスンとLGは、自社のテレビでGeForce Nowを提供しており、AT&Tもエヌビディアと提携し、自社の加入者に同サービスを提供することにしています。
このような動きは、エヌビディアのクラウドゲームビジネスの健全な成長を長期的に保証し、同社が今後長期にわたってビデオゲーム銘柄のトップであり続けることに貢献すると思われます。
*過去記事はこちら エヌビディアNVDA