企業や組織が保有する情報の量が増えれば増えるほど、セキュリティは最重要課題となります。重要なインフラや政府機関から大小の企業に至るまで、サイバーセキュリティは私たちの日常生活や安全保障に欠かせないものです。国際的な緊張の高まり、クラウドへの移行、デジタル業務への依存度の高まり、在宅勤務のトレンドなどが、すでに巨大化しているこの市場の成長の起爆剤となっています。
Statistaは、サイバーセキュリティ市場は2022年に世界で2,390億ドルに達し、2026年には3,450億ドル超に拡大すると推定しています。このうち、クラウドストライク・ホールディングス(CRWD)の試算によると、同社が獲得できる可能性のある市場(TAM)の総額は今年540億ドルを超え、今後も拡大が続くとされています。
ロシアのウクライナ侵攻によって世界の平和は打ち砕かれましたが、すでにその以前から、国家を後ろ盾にした犯罪者や悪質業者とのサイバー戦争は開始されていました。
SolarWindsのハッキングやColonial Pipelineへのランサムウェア攻撃などは、最も有名な被害のひとつです。CNETによると、2021年のサイバー攻撃による被害は前年比68%増と報告されています。ロシアの侵攻後、米国と欧州の大手銀行は、サイバー攻撃の可能性に過敏になるよう警告されました。
そんななか、クラウドストライクは、上位20行の銀行のうち15行を顧客としており、フォーチュン500社の半数以上が顧客であると報告しています。
クラウドストライクは、人工知能と機械学習を用いて、クラウドベースの侵害対策を提供しています。同社のプラットフォームは、エンドポイントを監視し、調査やインシデント対応を可能にします。
機械学習により、攻撃から得た知識を適応させることで、プラットフォームの有効性を高めることができます。攻撃の性質は常に進化しているため、クラウドストライクのリアルタイムなプラットフォームの更新は非常に重要です。クラウド上に存在することで、これが可能になります。
現在、クラウドストライクのFalconプラットフォームには9つのモジュールがあり、ほとんどの顧客は少なくとも5つのモジュールを使用しています。追加モジュールの採用により、クラウドストライクは既存顧客からの売上を増やしています。このため、同社はドルベースのネットリテンション(DBNR)率が120%以上であると報告しています。100%以上というのは、顧客が毎年より多く消費することを意味し、120%は例外的な数字です。
DBNRの高さとサブスクリプション収入の性質から、顧客成長はクラウドストライクにとって最も重要な指標の1つです。クラウドストライクは顧客獲得に膨大な資金を費やしており、2022年度には一般に認められた会計原則(GAAP)に基づき、総収入の42%以上を営業・マーケティング費用に充てています。
経営陣は、このことが将来的に手厚く報われると考えています。獲得した顧客はそれぞれ年間経常収益(ARR)となり、その額は時間の経過とともに増加していきます。このようにして、クラウドストライクは収益性を高めることができると考えています。
これまでのところ、クラウドストライクは凄まじい成功を収めています。総顧客数は2017年度の450社から指数関数的に増加し、毎年追加される顧客数は加速度的に増加して、2022年度には16,325社に達しています。
クラウドストライクのARRも、顧客数の増加とともに右肩上がりで伸びています。2022年度第3四半期に15億ドルに達した後、第4四半期には17億ドルを超えました。前年同期比のARRは65%増。2022年度の総売上高は14億5,000万ドルに達し、2021年度比で66%増となりました。
今期はさらに47%増の21億3,000万ドルから21億6,000万ドルの売上を見込んでいます。また、2022年度末の手元現預金20億ドル、長期借入金7億4000万ドルとバランスシートの状態も良好です。
グロース株はここ数ヶ月の間に壊滅的な打撃を受けましたが、クラウドストライクも例外ではありません。現在、株価は直近52週の高値から37%下落して取引されています。
しかし、ナスダック総合株価指数が20%近く下落したのに対して、業績による後押しを受け、年初来では約8%の下落にとどまっています。株価は今後12ヶ月の利益ベースで計算されるフォワードPERで20倍強と、ここ1年余りで最も低いバリュエーションとなっています。
短期的な変動は今後も予想されますが、中長期的なレンジでクラウドストライクを見ると今後数年のうちに市場を揺るがすような大きなリターンをもたらしてくれる可能性は非常に高く、長期投資家であればポートフォリオの中に必ず加えておきたい銘柄となっています。
*過去記事はこちら クラウドストライク CRWD