アマゾン・ドット・コム(AMZN)は3月9日、1株を20株にする株式分割の実行と、自社株買いプログラムを拡大することを発表しました。
株式分割は数学的には保有者に何の価値も生みませんが(パイを小さく切り分けるのと同じ)、一般投資家はそれを好む傾向があり、分割の発表はしばしば短期的な上昇を引き起こすことがあります。実際、アマゾン株はこのニュースを受けてアフターマーケットで7%近く上昇し、2,978ドルとなっています。
アマゾンはまた、自社株買いの限度額を現行の50億ドル(約5800億円)から100億ドルに引き上げることも併せて発表し、21億2000万ドルの自社株買いを実施しました。この計画は期限を定めていません。
アマゾンの株式分割は、先月発表されたアルファベット(GOOGL)の株式20対1分割(7月15日付)に続くものです。アップル(AAPL)は2020年に4対1の株式分割を行っています。
以前にも書きましたが、株式分割を行うことは以下のようなメリットがあると考えられます。
最近では1株未満でも証券会社から購入できるようになっていて高価な株が安くなっても株式の取引においてはあまり意味を持ちませんが、オプション取引においては、価格が安くなることは意味を持ちます。
3,000ドル余りの株のオプションを取引することは一般の個人投資家にとっては容易なことではありません。保守的なリスク管理の手段がたくさん用意されているオプション取引を行う投資家が増えているだけに株式分割は歓迎されるはずです。
あと、株価が安くなることで、ダウ平均構成銘柄に採用される可能性が非常に高くなることも株式分割を望む人がいる理由の一つです。
ダウは価格加重型の指数ですので、今のアマゾンの株価ではダウの30銘柄に加えるとその影響力が強くなり過ぎてしまいます。よって構成銘柄に加えられる可能性はないと見られていますが、株式分割が行われ、ダウに加えられても問題ない価格になると、構成銘柄に選ばれることは間違いないと思われます。そうなると機関投資家の購入が増え、アマゾン株の価値はさらに高まり既存株主はその恩恵に浴することになります。
現在のアマゾンぐらいの時価総額になると、ゼロサムゲームに過ぎないと言われる株式分割であっても、これだけ実利的な効果を生み出すことになります。
アマゾンはこれまで3回の株式分割を行なっており、最後に分割が行われたのは1999年の9月です。5月27日の営業終了時に有効となる予定の今回の株式分割は23年ぶり4回目の分割となります。
*過去記事はこちら アマゾン AMZN