3月8日開催されたアップル(AAPL)の特別イベント「Peek Performance」。このイベントで発表されたハードウェアは、いくつかの予想外の展開があったものの、ほぼ予想通りのものでした。
広く予想されていたように、アップルは、同社のスマートフォン・ラインアップのエントリーレベル製品である iPhone SE の新しい 5G バージョンを発表しました。これは、財務的な観点から見て、短期的には同社の業績に影響する重要な発表だと言えます。
ハードウェアの最大のサプライズは、Mac Studioに搭載される新しいハイエンドプロセッサ、M1 Ultraが発表されたことです。その価格は3,999ドルで、1,999ドルの廉価版もあり、アップル独自のM1 Maxチップを搭載しています。
アップルはまた、iPad Airタブレットの新バージョン、Studioや他のアップル製コンピュータで使用できる1,599ドルの新しい27インチディスプレイ、そしてiPhone 13のグリーン・メタリックバージョンも発表しました。
最大の驚きは、アップルがスポーツ番組に初めて大きく進出することを発表したことです。同社は、ストリーミングサービス「Apple TV+」がメジャーリーグと契約し、シーズン中の毎週金曜日の夜に2試合を放映することを発表しました。これは地域のスポーツネットワークでは視聴できない試合です。アップルはMLBとの契約条件を発表していませんが、アップルがスポーツをストリーミングビデオの重要な一部と見なしていることは明らかです。
今回のイベントについて多くのアナリストが評価を行なっています。
ジェフリーズのアナリスト、Kyle McNealy氏は、すべての新製品が3月18日に出荷を開始するという事実は、「比較的穏やかな」供給環境を示唆していると考えています。
これは、今回のイベントにおけるより肯定的な指標の一つであったとしており、 アップルのサプライチェーンが有効に機能していることを示すものとして評価しています。
モルガン・スタンレーのアナリストであるケイティ・ヒューバティ氏は、ウォール街の今年のiPhoneの予想が低すぎる可能性があると書いています。ヒューバティ氏は、iPhone SE3は、古いiPhoneを持つユーザーからの「アップグレードを促進するための新しいツール」になるはずだと考えており、自身の今年の平均販売価格の見積もりが保守的になりすぎていると考えているようです。
J.P. モルガンのSamik Cahatterjee氏は、iPhone SE3の発売が最も重要なニュースだったことに同意し、リサーチノートに、新機種は画面の小さな古いiPhoneのインストールベースからのアップグレードに拍車をかけると書いています。
SEはまた、スマートフォン市場におけるシェア拡大に拍車をかける可能性もあります。コーウェンのアナリストであるクリシュ・サンカー氏は、新型SEはAndroid端末に対して有利な位置にあり、特にアジアでのシェア拡大やインストールベースの増加に拍車をかける可能性があるとみています。
新しいM1 Ultraチップは、故スティーブ・ジョブズ氏なら “スクリーマー “と呼ぶに違いないものです。Ultraは2つのM1 Maxチップをつなぎ合わせたもので、UltraチップはこれまでのどのMacプロセッサよりもはるかに優れた性能を提供します。
UBSのアナリスト、デビッド・ヴォクト氏は、今回のイベントで発表されたM1 Ultraは「最も重要な長期的開発品」だと書いています。同氏は、2020年後半に最初のM1搭載ノートパソコンがデビューして以来、アップルはMacの市場シェアを7.5%から9%に拡大したことを指摘しています。同氏は、アップルの平均販売価格の伸びが業界を上回っていることから、今後もPC市場全体を凌駕していくはずだと考えています。
モルガン・スタンレーのヒューバティ氏は、新製品のほとんどは単体では利益を生まないものの、「これらの製品は合計で数千万台の出荷増となり、アップルが業界トップに定着することを維持し、新規ユーザーを引き付け、ユーザー1人当たりのハードウェアとサービスの両方の支出を伸ばすのに役立つだろう」と書いています。
アップルのMLBに関する発表は、スポーツのストリーミングへの移行が不可避であることを示しているようです。ニードハムのアナリストローラ・マーティン氏は、今回の発表はアマゾンのNFLの試合に関する契約に続くものだと指摘しています。
この組み合わせは、スポーツ分野にまだ参入していないネットフリックス(NFLX)がストリーミング戦争で不利になることを示唆していると、同氏は考えています。また、マーティン氏は、アップルが2021年に900億ドル以上という膨大なフリーキャッシュフローを生み出すことから、同社が長期的な勝者となる可能性が高いと考えています。
「我々は、ストリーミングサービスを提供する競合他社の “やるべき仕事 “は消費者を楽しませることだと考えており、消費者の30%がスポーツを必要としているため、ストリーミングサービスはスポーツ、ニュース、リアリティTV、競技番組などを放送しなければならない」と同氏は書いています。
*過去記事はこちら アップル AAPL