パランティア・テクノロジーズ(PLTR)は、米国政府向けのデータ分析企業としてスタートしたあと、民間市場へのサービス提供に軸足を移しました。政府があまりにも多くの個人データにアクセスすることを恐れる人たちは、パランティアがその情報の一部を処理していることを問題視しており、一部の人の間ではこの銘柄が議論の対象となることもあります。
パランティアには「ファウンドリー」、「ゴッサム」、「アポロ」という3つの主要サービスがあります。
ファウンドリー
ファウンドリーは、企業が情報フィードを解釈するためのデータ管理プラットフォームです。人工知能(AI)や機械学習などのツールは、処理能力を向上させ、サプライチェーンのボトルネックを特定することができます。
これは、今日この問題を抱えるすべての企業が利用できるものです。ファウンドリーでは、データを分析するためにコードを書く必要がないため、あらゆるビジネスタイプで導入が容易になります。
ゴッサム
ゴッサムは、政府機関でよく使われています。リアルタイムで情報を処理し、重要なデータをきれいに表示することで、意思決定を行う人が成功する可能性を高めます。
ジェームス・マティス元米国防長官は、ゴッサムについて「戦闘地域でより良い判断を下すための画期的な技術を開発した。我々が必要としているアドバンテージを今与えてくれている」と述べています。ゴッサムは軍事用途だけでなく、災害対応や法執行機関でも活躍します。
アポロ
アポロのソフトウェアにより、ファウンドリーはオンプレミスのデータセンターやクラウドネットワークなど、複数のネットワークで動作させることができます。また、企業は複数のクラウドプロバイダーを利用できるため、アマゾンやマイクロソフトが企業を不当な契約で拘束することもありません。
これは、オンプレミスであれクラウドであれ、1つのプロバイダーにこだわる必要がある典型的なSaaS(Software-as-a-Service)企業に対して、パランティアが優位に立つ理由です。
パランティアの四半期ごとの売上実績には大きなバラつきがあります。これはパランティアの契約は大規模なものが多いためです。第3四半期だけでも100万ドル以上の契約を54件、1,000万ドル以上の契約を18件成立させています。このため契約件数があまり変わらなくても1件あたりの契約金額の多寡によって売上にデコボコが生じることになっています。
第3四半期の売上高は36%増の3億9,200万ドルで、契約残は36億ドルと、2020年第3四半期から50%増加しました。民間企業への拡大を示すように、同社の商用顧客数はわずか9カ月で135%増加しました。判断するのにはまだ早いかもしれませんが、パランティアのビジネスモデルの拡大はうまくいっているように見えます。
パランティアはまだ利益を出してませんが、その主な原因は多額の株式ベースの報酬請求にあります。第3四半期には、3億9,200万ドルの収入がありながら、1億8,400万ドルの株式を従業員に支給しました。その結果、純損失率は26%というひどい数字になってしまいました。
この費用を差し引くと、(株式報酬がこれほど高い場合には、投資家はこんな計算を慎重に行う必要がありますが)純利益率は21%となります。この費用は現金ではないので、パランティアはフリーキャッシュフローでプラスになり、利益率は30%という素晴らしい数字になります。
株式報酬で成長を加速させることは、市場シェアを獲得する際の素晴らしい戦略です。経営陣は、会社が作り出す安価な通貨である株式を惜しみなく報酬として与えることで、人材を採用することができます。
しかし、企業はこの費用とのバランスを取らなければなりません。新しい株式を売り出すたびに既存の株式が希釈化されるため、株主はこの戦略をいつまでも容認しません。
多くの高成長・不採算のハイテク株と同様に、パランティアも先月から評価額が下がっています。36%で成長している銘柄に23の売上高株価倍率は割高と見做されても仕方がありません。株価は過去1年間の最高値から65%も下がってしまいました。
そんな中、投資家にとって魅力的なのは、パランティアが暗号通貨取引所というエキサイティングな新しい市場セグメントを獲得していることです。
ファウンドリーを使用することで、プラットフォームはマネーロンダリングのスキームを検出し、詐欺を減らすことができます。暗号資産市場での利用はまだ始まったばかりですが、政府を含む多くの団体にとって重要なユースケースになる可能性があります。
パランティアの競合企業としては、アルテリックス(AYX)があります。アルテリックスは多くのデータ分析ツールを提供していますが、クラウド移行の影響で売上が伸び悩んだため、昨年は株価が大きく下落しました。アルテリックスがクラウド移行を完了すると、両者の争いは激化する可能性があります。しかし、データ分析の分野では、複数の勝者が生まれる余地が十分にあります。
パランティアは、2022年に向けて勢いがあります。今後も売上と顧客を急速に増やしていくことが期待されます。しかし、株式ベースの報酬があるため、数年間は利益を上げることができないと見られます。またパランティアはRedditの掲示板でよく言及される銘柄であり、個人投資家の動きで大きな値動きをする可能性があります。
このように、短期的には株価が乱高下することを覚悟しなければなりませんが、5年、10年といったレンジで見た場合、パランティアの見通しは明るく、素晴らしい長期投資になる可能性を持った銘柄です。
*過去記事はこちら パランティア PLTR