ロブロックス（RBLX）は、3月に直接上場、株価は初取引日に基準価格である45ドルを大きく上回る64.50ドルで始まり、その後90ドル台前半まで上昇しました。
ロブロックスは米国のソフトウェア企業。オンラインゲーム・プラットフォームの運営およびゲーム制作システムを開発する。ユーザーである開発者やクリエイターが独自のゲームを作成できるデザインツール「Roblox Studio」を開発。また、その他のユーザーが作成されたゲームをプレイできるプラットフォームを提供する。ゲーム内通貨による収益は開発者と同社で分割される。
出所：YAHOO! JAPAN ファイナンス
ロブロックスは、ブロックを使ったシンプルなシステムでゲームを作ることができます。コーディングの経験を必要としないシンプルなプラットフォームであることが、ティーンエイジャーの間で人気を博しています。現在、デイリーアクティブユーザー（DAU）の半数以上が13歳以下です。
ロブロックスのクリエイターは、自分のゲームを他のユーザーと共有したり、アマゾンのTwitchのようなストリーミングプラットフォームで宣伝したり、ゲーム内の機能やアバターの化粧品のアップグレードで収益化したりすることができます。ロブロックスは、これらの取引をRobuxと呼ばれるゲーム内通貨で実現しています。プレイヤーはRobuxを購入してクリエイターに報酬を支払い、クリエイターは設定された為替レートでその通貨を米ドルに交換することができます。
このような自給自足のサイクルは、ロブロックスがユニティ・ソフトウェアのようなプロのゲーム開発エンジンとは異なり、マイクロソフトのMinecraftと共通する点が多いものです。強気派は、この好循環によってロブロックスが成長し続けると主張していますが、弱気派は、ロブロックスが若者のユーザーに過度に依存した流行であると考えています。
2018年の第1四半期から2021年にかけて、ロブロックスのDAUは1,030万人から4,210万人へと4倍以上に増加しました。その総利用時間は21億時間から97億時間に急増し、DAUあたりの平均ブッキングは11.62ドルから15.48ドルに上昇しました。
パンデミックの期間中、自宅でオンライン授業を受ける学生が増えたため、同社の成長は著しく加速しました。この加速は、売上の伸びに明確に反映されています。
アナリストは、通年のロブロックスの売上はさらに186%増の26.5億ドルになると予想しています。しかし、2022年度は、パンデミックが終わり、厳しい前年比に直面するため、売上は19％増の31億4,000万ドルにとどまると予想しています。
ロブロックス社の純損失は、クラウド・インフラストラクチャのコスト上昇により、依然として拡大しています。また、昨年は収益の3分の1以上を「開発者交換手数料」、つまりRobuxを米ドルに戻すための手数料として支払っています。
ウォールストリートでは、ロブロックスが徐々に赤字を縮小しながら今年黒字化し、2022年度には収益を3％伸ばすと予想しています。
しかし、この見通しはまだ楽観的すぎるかもしれません。というのも、ロブロックスが開発者を疎外することなく、開発者向け交換料金の為替レートを引き下げるのは難しいと思われるからです。また、最近導入したプレイヤー向けのプレミアム・サブスクリプションは、より安価なRobuxを購入することができるため、この圧力をさらに強める可能性があります。
このようなバラ色の予測に基づいて、ロブロックスの株式は、将来の利益の115倍、今年の売上の20倍で取引されています。このような高いバリュエーションは、株価に成長を盛り込みすぎていることを示唆しています。
ロブロックスは、2021年第1四半期にDAUの70％、売上の32％を占めていた海外（米国とカナダ以外）のユーザーを増やすことで、成長を維持できると考えています。最も有望な市場の一つは中国で、世界最大のビデオゲームパブリッシャーであるテンセント・ホールディングスと提携しています。
また、新機能を投入して、年配のゲーマーや開発者へのアピールを強化したり、サブスクリプションサービスへの移行により、より安定した経常収入を得て、より多くのユーザーを確保したりすることも可能です。また、クラウドのインフラをより有利な条件で導入し、運営費を削減することも可能です。
しかし、ロブロックスがティーンエイジャーのユーザーに圧倒的に依存しているのは、やはりリスクが大きいと思われます。ユーザーをネット上の犯罪者から守るためには、安全対策を常に改善しなければなりませんし、ユーザーの中には大人になって他のゲームに移ってしまう人もいるかもしれません。また、コンテンツ制作者は、ユニティのようなより複雑なゲームエンジンに移行したり、ロブロックスがRobuxの実世界での価値を下げた場合、あっさりと辞めてしまう可能性もあります。
ロブロックスは現在も急速に成長していますが、不安要素をたくさん抱えています。パンデミックによる成長の急上昇が持続可能かどうか、あるいは高額な営業費用を抑制できるかどうかを判断するには時期尚早で当面はウォッチリストに入れてその動向を見守るのが賢明かもしれません。