ハイテクサービスから自動車、家電製品まで、あらゆる製品の基本構成要素である半導体が世界的に不足しており、経済にも影響を及ぼしています。アプライド マテリアルズ(AMAT)のような半導体製造装置メーカーにとっては、まさに好機といえるでしょう。
チップメーカーは注文に追いつこうと必死になっており、生産量を増やそうとしているため、半導体製造装置への需要が旺盛になっています。アプライド マテリアルズは四半期ベースで過去最高の売上高を記録したばかりで、今年も猛烈なペースで成長を続け、2021年以降も好調を維持する可能性を示しています。
パンデミックで露呈した「ジャストインタイム」の限界
製造業に関わるすべてのビジネスにおいて、基本的な商品の供給管理は最重要課題です。最近では、あらゆる機器の製造に回路が使用されていますが、大量に在庫を抱えるほど安価な製品ではありません。それどころか、ハイエンドのチップの中には非常に高価なものもあります。
多くの企業はコスト管理のために、必要なチップだけを短時間で確保しており、チップ製造業界はこの「ジャストインタイム」戦略に適応してきました。少なくともパンデミックが起こるまでは、うまく機能していたと言えるでしょう。
パンデミックの影響で世界中の工場が閉鎖されたこともあり、チップを使用する顧客は昨年、限られた在庫でキャッシュフローを管理することを選択しました。しかし、ハイテクハードウェアの需要が突然復活したことで、経済の一部の分野(自動車や一部の家電製品など)では供給が不足するようになりました。
アプライド マテリアルズのCEOであるゲイリー・ディッカーソン氏は、2021年度第2四半期(2021年5月2日までの3カ月間)の決算説明会で、「過去20年間、半導体業界に貢献してきた高効率のジャストインタイム・サプライチェーンは、今後は最も効果的な戦略ではないかもしれない 」と述べました。
ファブとその顧客は現在、より柔軟なサプライチェーンを構築するために生産を拡大しようとしています。その結果、より多くの半導体製造装置が必要となり、そこでアプライド マテリアルズがその力を発揮することが求められています。
現地生産の促進
チップ生産能力増強の取り組みと同様に、ディッカーソン氏は、より現地に根ざした製造を目指すグローバルな競争についても言及しました。
半導体の製造は複雑なプロセスであり、最先端のシステムは何百もの工程を経て作られます。そのため、このプロセスに特化したチップ製造のハブが作られています。台湾セミコンダクター(TSM)はその最大手であり、その工場の大部分は台湾に位置しています。
しかし、さまざまな国(特に世界の2大経済大国である米国と中国)が、シリコンに飢えた消費者により直接的に供給するために、生産の現地化を推進しています。
例えば、台湾セミコンダクターはアリゾナ州で施設を拡張しており、ライバルのインテル(INTC)も同州でさらに2つの施設を計画しています。他の地域でも、政府機関の支援による同様の取り組みが行われています。
アプライド マテリアルズにとって、これは素晴らしいニュースです。このような新しい施設の建設には何年もかかるため、当面は最近の売上高の急増を下支えすることになるでしょう。
2021年度第2四半期の売上高は、前年同期比41%増の55億8,000万ドルでした。フリーキャッシュフローは74%増の9億8300万ドルとなっています。
第3四半期の見通しはさらに良好です。売上高はガイダンスの中間値である59億2,000万ドルを見込んでいます(前四半期比6%増、前年同期比35%増)。
テクノロジーの進化
長期的に見ると、アプライド マテリアルズが恩恵を受けているのは、世界的なチップ不足や政府による現地生産の促進だけではありません。テクノロジー自体の進化によるものも大きくなっています。
デジタルトランスフォーメーションにより、データ生成量が指数関数的に増加しており、このような大量のデータから価値を生み出すためには、新しいコンピューティングアプローチが必要です。AIコンピューティングは、カスタマイズされた全く新しいタイプのシリコンで構築されたワークロード別のソフトウェアとハードウェアで最も効果を発揮します。
AIやその他のカスタムメイドのアプリケーション用に設計された新しいタイプのチップが必要とされることは、半導体業界に新たなストレスを与えています。チップ工場は、カスタマイズされた回路への新たな需要に対応するために新しい装置を購入していますが、これには時間がかかり、対応するには10年単位の時間を要すると見られています。
アプライド マテリアルズが提供する製造装置の需要は、製造業の発展に伴って変動しますが、過去数十年間と同様に、売上は時間とともに順調に増加していくと予想されます。
アプライド マテリアルズの株価は、過去12ヶ月間で130%以上の上昇を見せ、高値で推移しています。世界的なチップ不足と新技術の登場により、業界には新たな需要が発生しており、その勢いは今後も衰えそうにはありません。
世界中のチップ工場に設備を供給する重要な企業であるアプライド マテリアルズは、半導体業界の基盤として、長期的に所有する価値のある優良企業であると言うことができます。